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経営に必要なコンピテンシー:企業の方向付け

【コンサルタント:藤本 正雄】

前回は、経営に必要なコンピテンシーを「企業の方向付け」「資源の最適配分」「人を動かす」「経営マインド」に分類し、「企業の方向付け」をさらに「戦略策定力」「目標設定力」「成果管理力」「抽象化力」に要素分解してご紹介しました。本日は、「抽象化力」の要素について取り上げてみたいと思います。

<前回のコラムはこちら>

自社の求める人材力を可視化する:コンピテンシーの視点



「戦略を策定する」「目標を設定する」等はその意味合いがイメージしやすいと思いますが、「物事を抽象化する」とはどんなことでしょうか。
辞書によると抽象化は、「対象から細部や具体性を取り去り、本質的に重要な要素を取り出し一つの概念として定義すること。また、異なる複数の対象に共通する性質や要素を見出し、共通点を組み合わせて汎用的な概念を構成すること。」とあります(引用:e-words」)。

一例を挙げてみましょう。
どんなスポーツが好きかは人それぞれですが、ご自身の好むスポーツを複数挙げて、なぜそれらが他のスポーツより好きなのか、考えてみてください。例えば私の場合、好きなスポーツの具体例と相互の比較は下記のようになります。
サッカーより野球が好き、サッカーよりテニスが好き、ボクシングより相撲が好き、相撲よりサッカーが好き、テニスと野球は同等に好き・・・
これらの具体例から一定の法則を考えてみると、「時間制限のないスポーツが好き(マッチポイントからの一発逆転も可能)」「格闘技より球技が好き」と言えそうです。要するに、「私は時間制限のない球技を好む傾向にある」ということです。この法則を見出したことで、未知のスポーツに対する私の関心度合いも仮説立てることができます。例えば、私はアイスホッケーもクリケットも見たこと・やったことがありませんが、上記の法則から「おそらく私には(氷上の格闘技と言われ、時間制限のある)アイスホッケーよりクリケットのほうが合ってそうだ」と想定できます。逆に、この法則を導き出せないと、「アイスホッケー、クリケット、、どっちに興味があるかやってみないとわからん」あるいは「なんとなくクリケットのほうが好きそうだ、でもその理由はわからない」となってしまいます。


このように、個々の事象やデータから「要するに~」「つまりは~」と結論を一言でまとめられる力が「抽象化できる力」というわけです。この抽象化力は、経営を行う上では極めて重要です。
仕事の場面では、問題・課題や成果が個別の「事象」として表れますが、「抽象」として表れてはくれません。個別の事象から「つまりはこういうことだ」と抽象化した法則や概念をストックしていき、似たような事象や全く別の事象に出会った時にそれらのストックから有効なものを使って何をすべきか意思決定していくわけです。社内外のあらゆる環境、お客様、利害関係者において発生している出来事の個々の事象を俯瞰して捉え、「要するに今何をすべきか」を意思決定する経営の仕事において、これらのストックを備えておける力の重要性は言うまでもないでしょう。

抽象化力を鍛えるには、文章や図にまとめる癖をつける、名経営者等偉人の名言・格言に触れて自分のものにする、などが有効だとされています。経営幹部や経営者になることを期待する人材に対しては、早くからこうした機会を増やすことに取り組まれてはいかがでしょうか。

次回も、他のコンピテンシー要素について考えてみたいと思います。

【藤本 正雄 (ふじもと まさお)】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルタント
豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社を経て現職。経営的視点に加え、産業カウンセラーとして社員個人の視点も踏まえたマネジメントへの示唆にも定評がある。異文化事情にも明るい。人と組織に関する様々なテーマに精通し、コンサルティング・研修等で様々な企業・個人への支援を行う。
■担当分野 経営・人事戦略、各種人材マネジメント支援(採用、人事制度、労務管理、キャリア開発、メンタルヘルス等)、テーマ別スキル育成

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