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設備投資のポイント(1)

                       【コンサルタント:平野 薫】

設備投資は企業の命運を左右します。前職の帝国データバンク調査員時代も倒産した会社を多数見てきましたが、設備投資が倒産のきっかけになっているケースは少なくありません。シャープが傾くきっかけになったのも工場への投資です。
つまり投資は企業にとってリスクです。しかしリスクがあるからと言って投資しなければいいのかというと、投資をしないことで生産効率が上がらず、製品の品質も向上しないということもあります。結果的に競争力が落ち、経営状態の悪化に繋がることもあります。

投資する上で大切なのは、“適切なタイミング”で、“自社の体力に見合った範囲”で、“業績向上の見込みがある”投資を、実施することです。

1990年代にある調査機関が日本の製造業に対して、投資の評価方法についてアンケートをしたところ、一番多かった回答は『特になし』というものだったそうです。つまり多くの企業経営者は経済性をそれほど検討せず、エイヤーで多額の投資をしているということです。

以前あるお客様から新規事業が赤字続きだという相談があったので状況をヒアリングした上で分析したことがあります。当初は稼働率が悪いので赤字が続いていると聞いていたのですが、計算したところ稼働率が100%になっても赤字から抜け出せないことが分かりました。広いスペースが必要な事業を家賃が高いエリアで展開していたため、生み出す付加価値と家賃などのコストが見合わなかった
ことがそもそもの原因でした。しっかり採算を計算すれば初めからやるべき案件でなかったかもしれません。実際、コンサルティングの現場で工場や物流センターの設備投資の相談を受けることがしばしばありますが、10億円を超える投資案件であっても深く検討されていないことが少なくありません。

ファーストリテイリング創業者である柳井正さんは「リスクのあるところにチャンスがある。」しかし、「『リスクを恐れずに』と、リスクを計算しないは同義ではない。」ということを書籍の中で言っています。経営者・経営幹部はリスクを恐れずにチャレンジするためにもリスクを計算する方法をしっかり理解すべきだと思います。

設備投資の意思決定のポイントは3つです。一つ目が自社の中長期的な戦略と適合するかの『戦略性』の観点、二つ目がその投資に自社の財務内容が耐えられるかの『安全性』の観点、三つ目が儲かるかどうかの『収益性』の観点です。次回からこのポイントを深堀して紹介していきたいと思います。

 

【平野 薫(ひらの かおる)】
株式会社小宮コンサルタンツ 執行役員
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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