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「財務諸表分析のポイント(2)『手元流動性』」

前回に続き、財務諸表分析のポイントについて説明していきたいと思います。今回は企業がどれだけ倒産しにくいかを表す「安全性」の中でも特に短期的な視点の指標である『手元流動性』について深堀していきます。

『手元流動性』とはすぐに使えるお金がどれだけあるかを示す指標で、具体的な計算方法としては「(現預金+すぐに売却できる有価証券)÷月商」となります(すぐに借りられるお金を把握していればそれを分子に加えても構いません)。基準としては大企業で1ヶ月、中堅企業で1.2~1.5ヶ月、中小企業で1.7ヶ月となっております。

経営者や経理の実務をやっている方からすると、そんなに沢山現金を持つ必要があるのか?と疑問に思われるかもしれません。たしかに実際のところ、そんなに手元に現金が無くても会社は回ります。極端な話ですが、月中の現金が一番少なくなるタイミングでお金が1円でも残っていたら企業は何の問題も無く経営を続けられます。そのため、使いもしない現金をわざわざ利息を支払って金融機関から借りる必要があるのだろうか?と疑問を覚える方もいるかもしれません。しかし月並みな言い方ですが、世の中何が起きるか分かりません。大地震が起きることだって、自社で売上が一番大きな販売先が倒産することだって、自社製品が問題を起こして全国を賑わすリコール問題に発展することだってあるかもしれません。エアバッグ問題を起こしたタカタの仕入先も問題が起きるまでは“まさか”タカタが倒産するとは思わなかったと思うし、ペヤングソース焼きそばを販売しているまるか食品もツイッターに異物混入の投稿をされるまでは“まさか”半年間も販売休止になるとは思っていなかったと思います。しかし世の中、“まさか”が起きない保証はどこにもありません。そしてその“まさか”が起きた時に必要なのは手元資金です。手元資金があれば時間を稼げますし、時間があれば再起するための選択肢が広がります。一方で、時間が稼げなければ再起する選択肢も限られ、結果的に倒産してしまうこともあります。

企業経営をしていると“まさか”は起こります。その“まさか”が起きても企業を存続させていくために、保険だと思って最低限の手元流動性は確保しておくべきです。

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ 執行役員
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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