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フィードバックについて考える(1)

今、「フィードバック」の価値が再評価されています。
その理由の1つは、以前に比べて人を育てにくい環境にあるからでしょう。
多様な価値観や労働制約を抱えた人材の増加、年上部下の増加、管理職のさらなるプレイングマネージャー化など、私たちを取り巻く環境の変化は人材育成の取り組みを困難にしています。フィードバックが改めて注目されるのは、人を育成する上で有効な方法だからであり、その価値を積極的に取り入れたいためです。

フィードバックとは、相手に事実を通知して自身の現状を的確に認識させ、認識した現状を改善するための行動計画を自発的に立てるのを支援することです。「事実の通知」とは、実際に起こっている事象を相手に伝えることです。事象には、部下にとって耳の痛い話も含まれます。以下は例です。

【事実】話しながら何度も時計を見ていますね/作業が遅れて計画通りに進んでいませんね
【主観的事実】○○について話すときはとても楽しそうに見えます/△△について質問されるといつも困ったような顔をしますね

部下がとった行動、行動がもたらした結果(望ましい、望ましくない)、それらが周囲にもたらしている影響などについて、定量的、定性的両面の情報を的確に伝えます。こうした事実の通知なしには、相手の部下は自身や自部署の現状を客観視することができないため、何を改善していきたいか・いくべきかについて十分に考えることができない(=自分の考えをもてない)わけです。

なお、フィードバックとアドバイスは似て非なるものです。アドバイスは、事実の通知を超えて自身の知識や経験に基づき自身が出した意見や結論まで伝えることです。評価・提案・命令などがそれにあたります。
【評価】他の仕事も気にしすぎて目の前の業務に集中できていませんね。
【提案】目の前の業務に集中したらどうですか。
【命令】目の前の業務に集中しなさい。

アドバイスは、能力が限定的な相手に対し具体的な指示をすべき時などタイミングによっては有効です。他方、相手への押し付けになると主体性を失わせてしまい逆効果になるとされています。また、自身の成功体験は当時の自身を取り巻く様々な環境要因の中で成立したものです。その結果得た知識や経験が現在の部下を取り巻く環境でそのまま有効だとは限りません。その意味でも、使い方には注意が必要と言えるでしょう。

私がお会いする経営者・管理職の方から、「部下に何か問いかけても主体的な意見が出てこない」「部下に何かを伝えてもなかなか動いてくれない」というお話を聞くことがよくあります。その際さらに聞いてみると、「事実の通知が不十分で相手が自分の意思や考えをもつに至っていない」、「相手に任せてよい課題で細かいアドバイスまでして主体性を失わせてしまっている」ことが多いものです。的確なフィードバックを行うことがこうした状況打開のカギになるかもしれません。

フィードバックについて、後続のコラムでも取り上げ考えていきたいと思います。

【藤本 正雄(ふじもと まさお) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社を経て現職。経営的視点に加え、産業カウンセラーとして社員個人の視点も踏まえたマネジメントへの示唆にも定評がある。異文化事情にも明るい。人と組織に関するあらゆるテーマに精通し、コンサルティング・研修等で様々な企業・個人への支援を行う。
■担当分野 経営戦略、人事戦略、各種人材マネジメント支援(採用、人事制度、労務管理、キャリア開発、メンタルヘルス等)、テーマ別スキル育成

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