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分析のポイント(3)『自己資本比率』

今回も引き続き財務諸表分析のポイントについて説明していきたいと思います。今回は企業がどれだけ倒産しにくいかを表す「安全性」の中でも中長期の安全性指標である『自己資本比率』について深堀していきます。

貸借対照表の右側はどのようにお金を調達したか(集めたか)を表す負債・純資産の部です。「負債」は借入金など“他人のお金”、「純資産」は資本金や利益剰余金など“自分のお金”です。「負債」は他人のお金なので返済義務がありますが、「純資産」は自分のお金なので返済義務はありません。
企業は借りたお金を返済できなくなると倒産します。そのため調達したお金の中でも返済しなくても良いお金(純資産)が多いほど倒産にしにくいわけです。調達したお金の中で返済しなくても良いお金(純資産)の比率を表したものが『自己資本比率』です。具体的な計算方法としては「純資産÷総資産(総資産=負債+純資産)」となります。
大まかな基準としては製造業など固定資産を多く持つ業種で20%以上、卸売業・小売業など流動資産を多く持つ業で15%以上、その他どのような業種でも10%を切っていたら過小資本です。
なお、一般的に経営が安定しやすい業界は自己資本比率がそれほど高くなくても何とかなりますが、景気変動の影響を受けやすい業界は自己資本比率を高めに維持しておく必要があります。例えば安定収入がある鉄道業界などは勝ち組の大手私鉄でも30%程度です。一方で需要の変動が大きい電子部品メーカーなどを見ると70%~80%と自己資本比率が非常に高い企業が多いです。健全な財務状況でなければ大きなショックに耐えられないため高い自己資本比率を維持しているわけです。別な言い方をすると、安定した業界は競争力を高めるためにある程度借入をして投資した方が良いケースがありますが、変動の激しい業界は無理に借入をして投資すべきではありません。

また、自己資本比率は金融機関や信用調査会社が企業の格付けをする上でも一番重要な指標であり、有名で分かりやすい指標であることから経営者でも自己資本比率の数字を気にする方は非常に多いと思います。時として借入を無理に減らし手元流動性など短期安全性を犠牲にしてまで自己資本比率を高めようとする方がいますが、これは非常にリスクが高く絶対に避けるべきです。本当の意味で健全な経営をするためにはしっかり利益を出して純資産を蓄積し、短期的な安全性を確保した上で十分な自己資本比率を実現すべきです。

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ 執行役員
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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