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財務諸表分析のポイント(5)『有形固定資産回転率』

今回も引き続き財務諸表分析のポイントについて説明していきたいと思います。今回は企業がどれだけ効率よく稼いでいるかを表す「収益性」の中でも『有形固定資産回転率』について深堀していきます。

事業に投資した資産がどれだけ有効に活用されているかを示す資産回転率という指標があります。今回取り上げる『有形固定資産回転率』はその中でも工場の機械や建物などの有形固定資産がどれだけ有効に活用されているか示す指標です。

計算式としては売上高÷有形固定資産で算出され、有形固定資産がどれだけ売上高に貢献したかという視点で見ます。数値が高ければより効率的に有形固定資産を活用し売上高に繋げることが出来ていますが、低ければ効率的に有形固定資産を活用できておらず売上高に繋がっていないということになります。

私がコンサルタントとして有形固定資産回転率を特に注意してみるのは成長している企業を見る時です。成長企業は受注が増加していく過程で、当初は現場改善など工夫をして生産性を高め、受注の増加に対応していきます。しかし、ある一定水準の受注量を超えた時点で設備投資に踏み切り、生産能力を高めます。と、ここまでは良いのですが、問題はその後です。一度、新たな投資をすると投資に対するハードルが下がり安易に投資をしてしまうケースが見受けられます。現場の従業員は最新の設備で楽をおぼえ必要に迫られた改善を行わなくなり、設備会社や建設会社はもっと生産能力を上げましょうと必死に営業攻勢をかけ、銀行も成長企業にならいくらでも融資しますよと近づいてきます。経営者としても増収増益だし、現場の従業員に聞いても生産能力の限界は近いと言うし、それなら投資するかという気持ちになりがちです。

しかし、こういうスタンスで投資をしているといつの間にか有形固定資産回転率が下がっていることが多いです。実は、よくよく見てみると設備を限界まで使うための改善を徹底していないため設備の稼働率が下がっていることが多いのです。このような状況で、景気が悪くなるなどで売上高が減ると大幅な減益になることがあります。気付かないうちに会社が贅肉体質になってしまっているのです。なお、これは有形固定資産回転率に限らず一人当たりの売上高など生産性に関わすこと全般に言えます。

経営者は売上や利益だけ見ていれば良いわけではなく、他人の意見に流されてもいけません。根幹の現場の強さを表す数字をしっかり見て、自分で判断する必要があります。

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ 執行役員
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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