戦略を管理会計の視点で考える

突然ですが、皆さまは販売するなら以下の(1)(2)のどちらが良いと考えますか?
(1)販売単価1000万円の商品×3台、(2)販売単価700万円の商品×10台
ここで安易に(2)に飛びついてしまう方は要注意です。それは戦略を立案する際に必要な管理会計の視点が抜け落ちているからです。管理会計の用語で限界利益というものがあります。
<限界利益=売上高-変動費>
限界利益とは売上高から変動費を引いたもので、変動費とは売上に応じて増加するコストです。ここでは分かりやすくするために、卸売業という前提で考えると、限界利益は粗利(売上総利益)、変動費は仕入金額(売上原価)になります。

(1)(2)のどちらを選ぶかを考える上で、限界利益(粗利)がいくらになるのかを考えなければいけません。もし(1)販売単価1000万円の商品の変動費が700万円、(2)販売単価700万円の商品の変動費が650万円だったとすると、限界利益は(1)(1000万円-700万円)×3=900万円、(2)(700万円-650万円)×10台=500万円になります。
つまり売上だけで見ると(2)の方が良いように見えますが、限界利益で見ると(1)の方が圧倒的に良いことが分かります。

利益ベースで考えるのは当たり前だと思う方もいるかもしれません。しかし普段戦略立案の仕事で様々な業種の企業様に携わっていますが、売上の大小だけで方向付けや資源配分を考えている企業が少なくありません。営業現場に至っては売上至上主義に陥り、(2)のような薄利の商品を更に値引きして売上をあげようとしていることさえあります。
以前、ある企業の管理会計データを分析していたところ、多大な経営資源を投入しているにも関わらず限界利益がほとんど出ていない事業がありました。経営者はその結果をみて事業の撤退を決断。ほかの収益性の高い事業に資源を再配分するということがありました。
そのように事業毎、お客様毎、商品毎、プロジェクト毎など細かい視点で収益性の分析することは非常に重要です。しかし、実際このような分析を実施しようとすると、現場からそんなに細かく数字を出せないという意見があがってくることがあります。しかし、多くの場合、それは出せないのではなく、面倒なので出したくないというのが本当のところです。

戦略立案を進める上で、過去の前例や直感でのみ方向性を決めている企業は、管理会計の数字で細かくパフォーマンスを把握することをお勧めします。きっと様々な気づきと驚きがあると思います。

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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