たまたまの学びをデザインする

電車の中で子供たちが「なぞかけ」をやっていました。「花火とかけまして乾杯ととく。そのココロは…打ち上げは楽しい」というアレです。(実際に子供たちが出していた例です。)なかなかレベルが高く、次から次へと作品を披露していきます。年齢は、小学校6年生くらい。「ウチの小1の子だと、まだしりとりくらいだよな~」と考えながら見ていました。

なぞかけは、認知心理学などでも研究されていて、調べると「うまいなぞかけはここが違う」といった研究例がでてきます。「そこには気づかなかった、なるほどね」と、相手に気づきを与えるのがうまいなぞかけのようです。そう考えると、小学生にしては、かなり高度なんじゃないかと思います。だってそうですよね。「気づきを与える」ってやりたくても、そう簡単にはできません(笑)。
…とはいえ、子供たちの作品の中には「うまい」とは言えないものも出てきていました。その時、みんなで「今のは違くないか~」って反応します。つまり「うまいこと言わないとダメ」という目標を互いに意識しているんですね。そして作品を繰り出すごとに、ちょっと振返って「うまいとは何か」を学習している、なんてことが起きていたのだ思います。

学習科学では、このような状況を「意図的学習」「偶発的学習」という言葉で議論することがあります。「意図的学習」とは、意図して知識・スキルを身につけることです。例えば、特定の英単語を暗記しようとする行為のことを言います。ややもすると勉強のための勉強になってしまうことが考えられますね。一方、偶発的学習とは、特定の行為を通じて結果的に対象の知識・スキルを身につけることです。好きな映画を英語で見るうちに語彙が増えるといったことです。効率は良くないものの、経験から学ぶので応用が効きやすくなると言われています。

子供たちのなぞかけで起きていたのは偶発的学習です。
その状況をちょっと分析してみると…
・共に明確な目標を認識している
・互いにフィードバックし合っている
・振返り、内省する機会がある
といった要素が含まれていました。これは質の高い偶発的学習にかかせないもので、これがないとただの遊びになってしまいます。逆に言えば、偶発的、つまり「たまたま」と言いながらもこのポイントを押さえれば、質の高い学びの機会をデザインできる、というわけです。

「どうもうちの社員は成長しない」とお嘆きになる経営者は多いと思います。
研修などの施策を考えることもあるかと思いますが、意図的学習だけになっていないか、偶発的な学びをデザインできないかといった観点でも、ぜひ考えてみてください。

【馬場 秀樹(ばば ひでき) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
上智大学外国語学部英語学科卒業。大学卒業後、ITベンチャーにてデジタル教材の開発に従事。働きながら大学院で、組織内の協働と人の成長についての研究活動を行う。その知見を活かし、NTTラーニングシステムズ株式会社にて人材・組織開発コンサルティング事業の立ち上げに参画。事業や組織の変革をゴールとしたファシリテーターとして、多数の企業のプロジェクトを支援。その後、大手コンサルティングファームでの中小企業向け人材育成制度の設計、研修講師経験を経て、小宮コンサルタンツに入社。

■担当分野 事業・組織変革、人材育成制度設計、プロジェクト推進、ファシリテーション、各種ビジネススキル研修

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