M&Aにおける財務規律


経営戦略実現の有力な方法のひとつだとして、M&Aがクローズアップされる機会が増えてきました。M&Aを実施したことがある、あるいは今後検討されるという企業様も多いのではないかと思います。
M&Aを行う際には、財務規律の確保が大切になってきます。いくら経営戦略に合致しているとしても、自社の台所事情・体力に見合わない買い物をしてしまうと、経営破綻しかねないからです。積極的にM&A攻勢をかけていったはいいものの、買った会社や事業が損失を出してしまい、その結果本体の経営自体も危うくなる。このようなニュースを聞くことも一般的です。
例えば、企業の安全性を表す指標には、下記のようなものが挙げられます。
<短期の支払い能力を示す指標>
・手元流動性(ヶ月)=(現預金+有価証券)÷月商
⇒基準:中小企業は1.7カ月以上
・流動比率=流動資産(1年以内に現金化できる資産:現預金、売掛金、有価証券など)÷流動負債(1年以内に支払いが必要な負債:短期借入金、買掛金など)
⇒基準:120%以上
<中長期の支払い能力を示す指標>
・自己資本比率=純資産÷総資産
⇒基準:製造業など固定資産の多い業種では20%以上
流動比率が100%を切ってしまうと、そのままでは1年以内に借金返済が滞ることになります。自己資本比率は、自社が持ちうる資産すべてのうち、返済義務のない純資産(株主の出資・利益剰余金など)が占めている割合です。この割合が高いほど、中長期的な財務の観点から企業経営は安定すると言えます。
上記の基準は一般論です。
一般論を踏まえた上で自社のビジネスモデルや取引先の特徴、経営方針などを考慮して、「自社で下回ってはいけないとする基準は○%」などと財務規律を決めておく必要があります。そして、社内にある現預金や金融機関から調達した借入金を使ってM&Aを検討する場合、そのM&A実行によってこれらの財務規律を下回らないようにすることが必要です。下回ってまでしてM&Aを実行すると、自社の経営自体が危なくなるからです。
また、経営には決断の時というのがあるのも事実でしょう。自社の将来を考えたら、絶対に○○に打って出ておきたい、その○○実現に大きな武器となる△△を持つ企業が後継者不在で売り出しを希望していると聞いた、こんな機会はまたとない、というイメージです。
自社で下回ってはいけないとする財務指標の基準は明確になっていますでしょうか。こうした基準を特に作っていない企業を時々見かけます。基準がないと、決断の時に冷静な判断が出来なくなり、財務上の判断を誤る可能性もあります。まだ特に設定されていない場合は、基準を明確にしておくことをお勧めします。







【藤本 正雄(ふじもと まさお) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部 チーフコンサルタント
立命館大学産業社会学部卒業。豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社(最優秀社員賞を受賞)を経て現職。人・組織に関するテーマを中心に、経営戦略や組織戦略・事業計画の策定・実行支援、事業承継支援、各種プロジェクト・研修等に携わる。産業カウンセラーとして経営者個人や社員へのコーチ等個別支援も行う。 ■担当分野 経営戦略、人事戦略、各種人材マネジメント支援(採用、人事制度、労務管理、キャリア開発、メンタルヘルス等)、テーマ別スキル育成

  • twitter
  • Facebook
  • Google+
  • LINE