企業内私塾のすすめ(2)


前回に引き続き「企業内私塾のすすめ」と題して、歴史の流れから私たちが“どうなるか”ではなく“どうするか”について私見を述べて参ります。ファーストリテイリングの柳井会長兼社長は、平成の30年間を振り返って「この30年間、世界は急速に成長しています。日本は世界の最先端の国から、もう中位の国になっています。ひょっとしたら、発展途上国になるんじゃないかと僕は思うんですよ。」(日経ビジネス、2019年10月9日)と怒りを露に述べました。確かに一人当たりのGDPをみればその通りの状況です。続けて「民度がすごく劣化した。それにもかかわらず、本屋では「日本が最高だ」という本ばかりで、僕はいつも気分が悪くなる。「日本は最高だった」なら分かるけど、どこが今、最高なのでしょうか。」と。コンサルティングの現場からすると、「日本は最高だった」ことすら殆どの社会人は知りません。まさに戦後教育の“貧農史観”“自虐史観”の賜物です。今あることが当たり前に思う人が増えているのも正しい歴史を知らないのだから仕方の無いことです。またJ&J日本法人やカルビーで経営トップを歴任し、現在パイオニア、ノジマ、スシローなどで社外取締役も務める松本晃氏は昨年亡くなられた経済評論家の堺屋太一さんの言葉を引用し、今の日本は「欲ない、夢ない、やる気ない」という状態とした上で、現在のわが国の停滞を「一番の問題は、時代認識がズレている経営者がいまだにいることです。」(NewsPicks、2019年12月31日)と柳井氏と同じく“ゆでガエル”の状況を語っている。さらに次世代に向けては「まず勉強ですね。今の若い人たちは、本当の意味で学んでいない。知識や教養などのインフラ無しで成功するのは、ただの幸運です。学ばずして、いろいろなベンチャー企業を作っても、打率は悪いよね。」と。松本氏は今年、次世代のリーダー人材を探すべく、パイオニア社で“松本経営塾”を始める予定だ。私たち現役世代は、次の世代にこの30年間の反省の上に何をすべきか。我々は先人の努力の上に存在し、未だ見ぬ可愛い子供たちの為に自分たちが存在していることを忘れていないか。今と同じ長期政権であった11代将軍徳川家斉以降の大御所時代を経て平和ボケしていた150年前に我が国が東アジア最後の植民地にならずに近代化を推し進めた原動力は、教養と志の高い人材を輩出した民間の私塾でした。勉強のし過ぎで死人が出るほどだった緒方洪庵先生の適塾は塾生皆がオランダ語の辞書を競い合って学んでいました。塾生の一人、大村益次郎は医師でしたが宇和島の伊達の殿様からの依頼で黒船を造ってしまいます。医師がなぜ黒船を造れたのか。それは塾生が単なる知識オタクではなく世の中の役に立ちたい、国を守りたいという大義の為に学んでいたからにほかなりません。会社は社会の公器であることに立ち戻り、次世代を豊かにする人材を生み出すことに、いま一度民間の志士として立ち上がる時なのではないでしょうか。“良い会社”を増やすことが良い社会、良い未来への道だと信じて。







【熊田 潤一(くまた じゅんいち) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
高崎経済大学経済学部卒業。教材メーカーにて営業所長、支店長を歴任し、組織変革や営業育成で実績を残す。その後、NTTラーニングシステムズ株式会社、三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ株式会社にて人材・組織開発コンサルティング事業の立ち上げに参画。自らも法人営業、コンサルタントとして多様な企業の課題解決、研修講師、ファシリテーターに従事。主に企業文化創造、人材開発の側面から経営支援を行う。
■担当分野 経営理念及びビジョンの策定と浸透策、人材開発、組織開発、インナーブランディング、営業パーソン育成、次世代リーダー育成等

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