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シリアスな危機の中で経営者が拠り所にした基本精神、そして信用と信頼


先日亡くなられた志村けんさんの出身地、東京都東村山市に銀河鉄道株式会社(山本宏昭社長)という社長自らハンドルを握る小さなバス会社があります。以前、東日本大震災の際に学生ボランティアを述べ2000人を被災地まで無償で送迎する活動をされていて知っていた会社さんです。新型コロナウイルスの影響で売り上げは前年同期比9割減の危機の中、満員の通勤電車で都心に向け通わなければならない地元の住民のために、“これまでの地元地域社会への恩返し”として新宿や丸の内まで3密を避けて運ぶ無料送迎バスを運行しているのです。なかなか出来ることではありません。この銀河鉄道さんの本業は観光バス、路線バス業ですが、大手バス会社が運行していない路線を開拓し、地域の人々に寄り添ってきました。安全で温もりのあるその運行姿勢は地元住民にとって安心して生活できる豊かさを確実に提供していたのです。この会社さんの理念は次のようなものです。「ありがとう」ではじまり「ありがとう」で結ぶ、これが「銀河鉄道の道」である。 お客さまとの出会いを大切にする、これが「銀河鉄道の心」である。 お客さまに感動をあたえること、これが「銀河鉄道の使命」である。 いま新型コロナウイルスの危機時に際して、実践しているのはまさにこの理念に基づいた行動です。 現在改めて100年前のパンデミックが注目されています。第一次世界大戦が行われていた1918年(大正7年)に流行が始まったスペイン風邪です。日本では“流行性感冒”と呼ばれ、産経新聞によれば大正7年10月あたりから頻繁に新聞記事の多くを占めるようになったようです。産経以外にも確認しただけで10紙以上がこの100年前の状況の記事を振り返っていますが、状況や人間のする行動は全くの瓜二つであることが分かります。この中で、我が国の経営者は何をしていたのか。私の前職である三越伊勢丹グループはこのパンデミックを乗り越えてきた会社です。いまはまさに百貨店も危機に瀕していますが、エールを込めてもう一度歴史を共有したいと思います。当時第一次世界大戦の勃発で暴落していた株価は、参戦国からの軍事物資の注文殺到で一気に景気が持ち直していました。一方で米60%、味噌50%、炭130%というように物価が高騰し急激なインフレを起こしていました。やがて米騒動が起こるなど、一般市民の生活は混乱をしていました。三越の経営者でありデパートの創始者であった日比翁助は「社会公衆の店」「公正な価格(フェアプライス)」を社是としていましたが、この時日用品を中心にバーゲンを行い、創業の精神を貫きました(『商売繁盛の秘訣』非公開)。その後に起きた関東大震災でも焼失した店跡や物流拠点で三越マーケットを開催し、大いに困窮する市民を救いました。伊勢丹も同様です。また取引先への信用も大切にし、焼失した仕入れ品の分もすべて取引先に支払い、従業員への見舞金まで支払っています。この信用(実績の積み重ね)がその後の信頼(未来への関係)に繋がったと社史は結んでいます。この危機の時こそ、何のためにこの事業を始めたのか、初志に立ち返り何を実践すべきか。そして危機にこそ既存事業における信用の積み重ねがものをいう、歴史はそのことを教えてくれているように感じるのです。





【熊田 潤一(くまた じゅんいち) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
高崎経済大学経済学部卒業。教材メーカーにて営業所長、支店長を歴任し、組織変革や営業育成で実績を残す。その後、NTTラーニングシステムズ株式会社、三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ株式会社にて人材・組織開発コンサルティング事業の立ち上げに参画。自らも法人営業、コンサルタントとして多様な企業の課題解決、研修講師、ファシリテーターに従事。主に企業文化創造、人材開発の側面から経営支援を行う。
■担当分野 経営理念及びビジョンの策定と浸透策、人材開発、組織開発、インナーブランディング、営業パーソン育成、次世代リーダー育成等

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