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自社の求める人材力を可視化する:コンピテンシーの視点

【コンサルタント:藤本 正雄】

「彼は経営幹部として、物足りない。」
「そうですか。主にどんな能力に物足りなさを感じていますか。」
「なんというか、迫力に欠ける。」
「社長のおっしゃる迫力の不足感が、例えばどんな行動として表れることがありますか。」
「なんというか、全体的に腹くくりが足らんのだよ。」

以前、ある社長とやり取りした時の会話の一部です。
社長の話には人材育成に関する的を射た一面も垣間見られるものの、本質的な解決につながる問題点の整理には至っていないと言えるでしょう。

実際、自社の人材力について上記のように漠然と大括りに捉えている会社は多いものです。
皆さんの会社ではいかがでしょうか。

会社によっては、自社のコンピテンシー(*注)を定義し、アセスメントで社員の弱いコンピテンシー要素を特定し、個々の育成計画に活かしているところもあります。
職種ごとに精緻なコンピテンシーモデルを作り込んでいくことにどこまでの意味があるかは議論が分かれるところですが、少なくとも自社が求める人材力について定義を明確化することには一定の意味があると言えます。

特に組織の下位階層の人材は、社業や仕事の内容が異なれば求められるコンピテンシーも変わりやすいため、自社のビジョン・理念や戦略との整合性も図りながら、職種ごとに設定するのが基本です。一方で、経営者・経営幹部等組織の上位階層になるにつれ、求められるコンピテンシーは社業を超えてどの会社でも当てはまる普遍的なものになっていきます。

以下は筆者による、経営に必要なコンピテンシーの分類です。経営の三要素及びその土台となるマインドを網羅するために必要な資質・行動特性を計16要素で分類したものです。そして、例えば「抽象化力:様々な理論・考え方・現場で起こっている事実から、一つの結論を導き出せる力」のように各要素の定義づけを行い、そして何が満たされればその要素が習得されているとみなせるのかを判断する評価基準を設定しています。

企業の方向付け:戦略策定力、目標設定力、成果管理力、抽象化力             169ac5aea2e0b653a94298f28572df4c_m 資源の最適配分:人材調達力、後継者育成力、資金調達力、全社最適の視点
人を動かす  :人脈構築力、対人説得力、理念浸透力、権限移譲力
経営マインド :品格、情熱、変革力、決断力

このような分類に基づいて人材の現状を把握すると、例えば「彼女は方向付けの力はあるが人を動かす力、特に部下を説得する力が足らない。」「自社の人材は全社的な傾向として抽象化力が弱い。抽象化力の育成を目的に○○の研修を企画しよう。」などの議論につながります。冒頭の経営幹部の例も、上記のように整理された資質・行動特性に基づいた考察を行うことで、人材力としての本質的な問題と解決の方向性がより明確になるはずです。

次回以降のコラムで、上記の16要素の定義や評価基準について順次ご紹介したいと思います。

*コンピテンシー:高業績者に共通してみられる行動特性のこと

 

【藤本 正雄 (ふじもと まさお)】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルタント
豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社を経て現職。経営的視点に加え、産業カウンセラーとして社員個人の視点も踏まえたマネジメントへの示唆にも定評がある。異文化事情にも明るい。人と組織に関する様々なテーマに精通し、コンサルティング・研修等で様々な企業・個人への支援を行う。
■担当分野 経営・人事戦略、各種人材マネジメント支援(採用、人事制度、労務管理、キャリア開発、メンタルヘルス等)、テーマ別スキル育成

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