不正につながる要因:動機・プレッシャー

前回のコラム「不正のトライアングル」の内容に対して、様々な方から感想をお寄せいただきました。誠にありがとうございます。

<前回のコラムはこちら>

不正のトライアングル



今回も、引き続き不正行為が発生するメカニズムについて考えてみたいと思います。
人が不正に走りやすくなる3要件のうちのひとつが、「不正を犯す動機・プレッシャーの存在」です。不正行為に走りたいという衝動につながる強い「動機・プレッシャーの存在」を従業員に感じさせることのないよう、特に経営者や管理職者は日常の自身の言動に注意すべきです。

以前、お客様・従業員共に満足度の低い企業において、状況を改善するための取り組みを行ったことがあります。まず現状を把握すべく、その企業の社員に対してヒアリングを行った結果、不正を促す強いプレッシャーの存在が確認できました。具体的には、多くの社員から「目標達成のために、お客様の都合に関係なくあらゆる手段で売上をつくらなければならない」といった発言が聞かれたのです。事の発端は、会議での社長の一言にありました。部長職以上が集まる営業会議にて、「今月の売上目標を必達せよ。そのためにどんな手段を使ってもかまわない。」のような発言がなされたことがあったのです。これを受けて部長から課長、課長から主任・社員に対し、「どんな手段を使っても月末までに売上をつくれ」という指示が飛びました。その結果、提案するサービスが合っていないと思われるお客様にも、十分な説明をせずに営業トークを塗り重ねて受注し、後からクレームを招いてしまっていたのです。これに類することが、日常的に行われていたようです。

社長としては、無理やりの販売を推奨したのではなく、自分なりの表現で「今月の目標に対する取り組みが緩い。もっと創意工夫と努力がほしい。」と檄を飛ばしたつもりだったそうです。しかし、幹部以下社員の側は「目標必達がお客様の便益以上の最重要事項。絶対的な業務命令。」というメッセージとして受け取ったわけです。この例からも、些細な一言から組織は総崩れしかねないという認識をもち、上位職であるほど自身の言動に品格が伴っているかどうか注意を払うべきだと言えます。また、「望ましい理念や考え方はそう簡単には浸透しないが、望ましくない噂や考え方はあっという間に浸透するものだ」ということも認識しておくべきでしょう。

加えて、自身の所属する組織にとっての「不正」の定義も必要です。企業に求められるのは、最低限の法令遵守を上回る、その企業ブランドに合った行動です。法令違反に加えてどんな行為を自社は否定するのか、基準を明確にして組織内外に示し続ける取り組みが求められます。

【藤本 正雄(ふじもと まさお) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部 チーフコンサルタント
立命館大学産業社会学部卒業。豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社(最優秀社員賞を受賞)を経て現職。人・組織に関するテーマを中心に、経営戦略や組織戦略・事業計画の策定・実行支援、事業承継支援、各種プロジェクト・研修等に携わる。産業カウンセラーとして経営者個人や社員へのコーチ等個別支援も行う。

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