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動機づけについて考える:セルフモチベーションの視点

先日ある介護士の方と話す機会がありました。その方は、自身の仕事について「私はお年寄りの人が大好きなんです」と目を輝かせながら話してくれました。施設利用者である高齢者の方に対して話しかけたり、何かをしたりしていると、無上の喜びを感じると言うのです。筆者はこれまで過去に複数の(いわゆる老人ホームと言われる)施設に見学に行き、施設内の介護士の方に話を聞く機会が何度かありました。その際にも、同様の話を何度か聞いたことがあります。個人的に、この言葉を聞くたびに強い衝撃を感じます。筆者も高齢者を敬うことを心がけているつもりではありますし、色々なことを見習いたいとも思うのですが、高齢者と接することで無上の喜びを感じるとまでは言えないからです。ゆえに、すごい資質だと感じます。自分には持ち合わせていないような、老人ホームで介護士として活躍する上での重要な資質の一つが、この言葉に表れているような気がするのです。

他方、「高齢者と接するのが好き」という気質を持ち合わせていることに気づいたタイミングは、人それぞれのようです。私がお話した方の中でも、高校生の時点でその気質を自覚し介護の専門学校に進んだ人もいれば、特に意識せずたまたま介護の職業を選んだ後に自覚した人もいるようです。また、話を聞いた全員から上記のような言葉が出てきたわけでもありませんので、その気質を持っていながらも自覚するには至っていない人もいることでしょう。

キャリア形成について、スタンフォード大学のクランボルツ教授によって提唱された「計画された偶発性理論(プランドハプンスタンスセオリー)」という考え方があります。その考え方では、「個人のキャリアの8割は予期しない偶発的な出来事によって決まる」とされています。その上で、予期しない出来事をただ待つだけでなく自らつくり出せるよう積極的に行動し、偶然を意図的・計画的によりよく活かして自分のキャリアをよいものに変えていくことを提唱しています。

職業選択のきっかけは、その人次第で様々でしょう。選び抜いたうえで職種や会社を決めた人もいれば、気が付いたら今いるところに辿り着いていたという人もいるでしょう。しかし、後者の人でも、ルーレットで職業や就業先を決めたわけではないと思います。自分の資質や望みなどの要素に合うと何となく感じる、採用選考の過程でその会社に縁を感じたなど、無意識の中でもなんらかの選択を行った結果の蓄積ではないでしょうか。また、会社内においても役割の変更など予期しない偶発的な出来事があるかもしれません。それらをポジティブに意味づけし、さらなるよい偶然をつくり出していけるよう行動する姿勢が、豊かなキャリア形成につながると言えるのではないでしょうか。その上で、冒頭の介護士のように、自分が今ここにいる理由を自分の中でより明確にできれば、仕事に臨む動機づけはさらに高まるものと考えます。このようなセルフモチベーションを発揮している人材で溢れた状態になれば、その組織は自然と活性化すると言えるでしょう。

【藤本 正雄(ふじもと まさお) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部 チーフコンサルタント
立命館大学産業社会学部卒業。豪州ボンド大学経営学修士課程卒業(MBA)。人材育成専門機関、事業会社の人事部門、組織人事コンサルティング会社(最優秀社員賞を受賞)を経て現職。人・組織に関するテーマを中心に、経営戦略や組織戦略・事業計画の策定・実行支援、事業承継支援、各種プロジェクト・研修等に携わる。産業カウンセラーとして経営者個人や社員へのコーチ等個別支援も行う。

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