財務諸表分析のポイント(1)

経営者・経営幹部にとって財務諸表を読むスキルは必須のスキルです。財務諸表が読めないと、自社の状況を正確に把握することができず意思決定を誤ってしまうことがあります。財務状況を把握できていないと自社の投資余力を見誤ってしまい過大な投資に踏み切ってしまうこともあるし、逆に保守的になり過ぎて必要な投資ができずチャンスを失ってしまうこともあります。自社のパフォーマンスを把握することができないので、現状に則した効果的な経営戦略を立てることも難しくなります。また、場合によっては会社の致命的な問題を見落としてしまうということにも繋がりかねません。私が前職時代に関わった会社でも子会社の不正な会計処理に経営者が気づいておらず、私が指摘し発覚した際には数億円の損失を計上する事態に発展したというケースもあります。

このように経営をする上でとても重要なスキルである一方で、財務諸表に対して苦手意識を持っている経営者・経営幹部はとても多いように思えます。そこで今回から経営コンサルタント、そして前職の帝国データバンクの調査員をしていた経験を活かし、財務諸表を読む上で重要な財務諸表分析のポイントについて複数回にわたってお伝えしていきたいと思います。

そもそも財務諸表分析は何のために行うのか。自社の財務諸表分析を行う目的は、「健康診断」のためです。皆さんも人間ドックなどで、血糖値やコレステロールが高くなっていないか定期的に調べられると思います。それと同じで、在庫水準は適正か、効率的に利益を上げているかなどの視点で自社の過去のデータや同業他社のデータと比較して異常値が出ていないかを調べるわけです。もしそこで異常値が出ていたら精密検査として具体的な要因を調べます。例えば在庫水準が異常に高くなっていたらどんな商品の在庫が増えているのか商品毎に確認したり、場合によっては直接倉庫に行って不良在庫や死蔵在庫が多く発生しているか確認します。利益水準が落ちていたら、商品毎、担当者毎の利益を算出し、問題になっている営業所に出向き利益率が落ちている原因を特定するわけです。

次回から、どれだけ倒産しにくいかを表す『安全性』(手元流動性・自己資本比率など)、どれだけ効率よく稼いでいるかを表す『収益性』(売上高総利益率・売上高経常利益率・資産回転率など)の2つの視点でお伝えしていきたいと思います。

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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