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「『ポスト平成』に成長し続ける経営とは?~レッドオーシャンからの脱却~(2)」

このコラムを書いている今日は3月11日。東日本大震災から8年が経過しました。
昨年久しぶりに被災地三陸の地に帰郷しました。未だ荒涼とした更地、荒れ地が多いことに寂しい気持ちを抱きました。しかし同時にそこで復旧復興に向き合ってきた三陸の人々の人を大切にする温もりは何一つ変わっていないことも感じました。それは震災直後も同じでした。改めて、被災された皆さまの物心両面の幸福が訪れることを切に願います。

前回『ポスト平成』の時代に向けて、今一度この30年間を振り返り、次世代のために同じ30年間を繰り返してはならない主旨の内容を書きました。私たちはこの30年間、何をしてきたのか。私自身も、恥の多い30年間でした。有史以来90回余も大津波に襲われてきた三陸の地に生まれ育ちながら、先人の方々がその労苦の上で何不自由ない国土と社会を築き続けてくれたことに感謝もせず、この平穏を当たり前のように享受してきました。こうして歴史は全て未来へつながっているのです。そのことを今一度胸に刻み、我々現役世代が次世代にどのような社会を残すのか、今まさに問われているように感じます。

次世代に何を遺し、何を創造していくのか。この問いを企業経営に照らすと、不変の価値観の伝道とイノベーションに対する活動の両輪をどう未来に駆動させ続けていくのかということが命題になります。このことは100年以上続く老舗企業が実践してきたことへの研究として明らかになっています。これに関連する書籍も複数あります。

例えば、私が頻繁に足を運ぶ北海道帯広市には柳月(りゅうげつ)さんという企業があります。新卒採用枠10名未満にもかかわらず応募学生が数千人という人気企業にまでなっています。創業当時60以上もの菓子屋が軒を連ねる帯広の地で人々に選ばれ続け、いまでは「三方六」などで全国的にも知られる菓子メーカーです。100年には満たないものの、創業は戦後まもない1947年(昭和22年)。原料の高騰が続く中、イチゴのショートケーキの値段は210円です。つい最近まで100円台をキープしていました。それは何故か?それは創業の志、つまり不変の価値観を貫いているからです。そこにはこのようなストーリーがあります。終戦後、満州からの引き上げ列車の中で母親がどうあやしても泣き止まないお子さんがいました。そこに居合わせた男性がキャンデーをその子に与えたところたちまち泣き止んだそうです。「菓子には母親の愛情にも勝る力がある」そう創業者の田村氏は感じたそうです。柳月さんはこのストーリーから紡ぎ出された「私たちはお菓子を通じて家族の絆を結び、人と人との心を結びます。」という理念を大切に社内外に伝道しています。そしてそれを今でも大切にしているのです。品質や新商品の開発はもとより、値段一つにもこの思いをこめ実践している。週に一度でも菓子を囲んで家族団らんができるように、その思いが210円、なのです。人に喜んでもらいたい、人を、家族を、地域社会を大切にしたい、その伝道文化が無くては、「差別化」といってもただの「ブーム」に過ぎないのです。

 

【熊田 潤一(くまた じゅんいち) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
高崎経済大学経済学部卒業。教材メーカーにて営業所長、支店長を歴任し、組織変革や営業育成で実績を残す。その後、NTTラーニングシステムズ株式会社、三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ株式会社にて人材・組織開発コンサルティング事業の立ち上げに参画。自らも法人営業、コンサルタントとして多様な企業の課題解決、研修講師、ファシリテーターに従事。主に企業文化創造、人材開発の側面から経営支援を行う。
■担当分野 経営理念及びビジョンの策定と浸透策、人材開発、組織開発、インナーブランディング、営業パーソン育成、次世代リーダー育成等

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