『働き方改革』で思うこと

前回3月に寄稿してからこの間、我が国では令和の御代を迎え、企業においてはその1ヶ月前に平成の置き土産のようにして「働き方改革関連法」(一部大企業先行)が施行されました。ちょうどこの間に『働き方改革の本質は「生き方」と「企業文化」の変革』という題名で雑誌に寄稿させて頂く機会がありました(『月刊「税理」4月号』ぎょうせい)。

4月に入ってからも、どうもこの改革法案と企業の実態の間に「違和感」が残っています。どのような「違和感」か?一言で申せば「働かない改革」に終始していないか、ということです。統計で見ると我が国は38カ国中23位とそれほど働き過ぎという時代ではなくなっています(OECD、2017年調査)。因みに同じ統計で2011年ではメキシコに次いで2位でしたので、この間に急速にカウントされる労働時間が減ったとみることが出来ます。ここでポイントが一つ。「従業員が働かなくなった」のか「企業が働かせなくなったのか」の違いです。大企業の実態は想像がつきます。以前私が勤めていた大企業グループ2社では、半ば管理(コントロール)による労働時間の削減が行われていました。「残業はよくないこと」という意識が2~3年かけて組織に風土化していきました。そこでどのような光景があったのか。定時で帰る社員は2パターンあります。「残業をするのは時間内に終らせる能力が無いからだ」という「生産性」(=時間投入に対する付加価値額)の観点の考え方を持っている人。もう一つは「仕事に情熱がなく、早く仕事(会社)から解放されたい」と考える人のパターンです。前者は仕事に情熱があることは当たり前なので付加価値を高めようと自己の成長に努力するので問題ありませんが、経営上、注意すべきは後者の方がどれほどいるかです。

私はお客さまから頂戴するコンサルティングのお仕事の中で、現場の社員のみなさんの生声に1対1で触れる「現場ヒアリング」をしばしば実施しています。年間数百人、業種も様々、階層も若手から50代まで幅広く聴きます。この5年間でみても後者(仕事に情熱を持てない)の従業員の方が7割~8割を占めることが珍しくありません。これではただの労働時間削減で終ってしまい、剰余時間が新たな価値創造に転換されません。では残業を減らした上で生産性の高い組織とそうでない組織を分かつものは何か。今のところ実感するのは、ヨコではなくタテのコミュニケーションのあり方です。「何のために人生を共にし、働くのか」「私たちの共通の目的、使命は何か」或いは「あなたのどのようなところが我が社にとって必要なのか」など、そうした一人の人間としての根本的なコミュニケーションが現場の一人ひとりと交わされていないのが思うように生産性が上がらない組織の共通点です。ともあれ働き方改革法案は労働時間をさらに削減させるでしょう。生産性の分母である効率性も大切ですが、付加価値を従業員の皆さんとどのように高めていくのかという分子も今一度見直してみてはいかがでしょうか。

【熊田 潤一(くまた じゅんいち) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
高崎経済大学経済学部卒業。教材メーカーにて営業所長、支店長を歴任し、組織変革や営業育成で実績を残す。その後、NTTラーニングシステムズ株式会社、三越伊勢丹ヒューマン・ソリューションズ株式会社にて人材・組織開発コンサルティング事業の立ち上げに参画。自らも法人営業、コンサルタントとして多様な企業の課題解決、研修講師、ファシリテーターに従事。主に企業文化創造、人材開発の側面から経営支援を行う。
■担当分野 経営理念及びビジョンの策定と浸透策、人材開発、組織開発、インナーブランディング、営業パーソン育成、次世代リーダー育成等

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