Please(お先にどうぞ)

飛行機に乗るため、空港に向かう電車を待っていました。

乗車口にはすでに行列ができていました。座席指定のチケットを持っていた私は、大きな荷物を持って行列の最後尾まで移動するのが煩わしかったので、乗車口から少し離れたところに立っていました。行列の人が全員乗った後に、ゆっくり乗ればいいと思い、そこで待っていました。

電車が到着し、行列の人が乗っていきます。列の最後に並んでいた、大きなスーツケースを持った外国人の男性が乗る番になった時、離れて立っていた私に「Please(お先にどうぞ)」と譲ってくださったのです。

日本人同士では、あまりこういうことはないように思います。ルール上は列に並んでいる方が優先なのですから、女性だからと言って譲られることは、正直あまりありません。

そのため一瞬戸惑い、「いえいえ、そちらこそお先に」と思わず遠慮してしまいました。せっかくのご厚意を素直に受けないのは却って失礼だったのですが、こちらもやはり不慣れな日本人です。

でも、その外国の方は、にっこり笑って、私に譲るジェスチャーを繰り返すだけ。そこでやっと私も笑顔でお礼を言って、先に乗らせていただきましたが、たったこれだけのやり取りで、お互いが笑顔になり、小さな交流が生まれて、とても優しい気持ちになりました。

日本人がルールに従い、行列して待つ姿は礼儀正しい日本人の特徴のように言われます。お互いにルールを守ることは、もちろん大切なことですが、一方でルールに従っていればいい、ルール上自分が優先なのだからと、ちょっとした思いやりを発揮することを避けているかもしれないと、その外国人の方を見て思いました。

見知らぬ人にもちょっとした優しさや気遣いを示せる人には、心の余裕が感じられます。そんな風にありたいものです。

【井出 元子】

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