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加計問題を機に本質的な問題にも焦点をあてるべき

先週リリースされた日経ビジネスオンラインの連載でも詳しく触れましたが、学校法人「加計学園」の問題に関して、私はもっと本質的な議論をするべきだと思っています。もちろん、安倍首相が同学園に便宜を図ったのではないかという疑惑は徹底的に究明すべきです。もし事実であれば、許されないことであるのは言うまでもありません。しかし、私は、もっと本質的な議論が置き去りになっている気がしてなりません。私たちは、今回の問題を契機に、日本の「岩盤規制」にも目を向けるべきではないかと思うのです。

政府は、50年以上にわたって獣医学部の新設を認めなかったといいます。加計学園も15回も獣医学部開設の認可申請をしてきましたが、ことごとく却下され続けてきました。私はもちろん、加計学園を応援する気は毛頭ありませんが、背景には、日本獣医師会による強い反対があったと言われています。将来的にはペット数は減るという推計もありますが、これだけの空前のペットブームの中で、獣医のニーズが高まっているにも関わらず、既得権益がここまで守られていることに、私は驚愕しました。

こうしたことは氷山の一角に過ぎません。例えば、安倍首相は「既得権益の岩盤を打ち破る」として、農業、医療、労働、教育の4分野を改革の対象として挙げています。その中で、改革が最も遅れているのは、教育です。近年、待機児童の問題が深刻化していますが、なぜ認可保育所を増やせないかといえば、規制が強いからです。さらには保育所を従来から運営する社会福祉法人は、新規の保育所開設に抵抗感を示しているということもあります。

今、政府は、保育や幼児教育を無償化するために「こども保険」の創設や、公立高校の授業料を無償にする計画などを進めようとしています。これらと同時に、私は、加計学園の問題を突破口にして、いかに教育業界の岩盤規制を打破していくかということを考えるべきだと思うのです。そのためには、やはり規制緩和が必要なことはいうまでもありません。

この根本的な原因は何でしょうか。それは、既得権益によって学校自体が守られているからです。競争原理が働いていないから、変わる必要がない。さらには大学の教員市場、特にレベルの高い人材市場の流動性もなく、また競争もそれほどありませんから、教員の能力も十分には上がりません。

これでは日本人の学力は下がる一方です。大学という高等教育のレベルが下がれば、日本経済が世界から取り残されていくのも当然の話です。

こういった現状を打破するためには、教育の規制改革は必須です。教員の流動性を高めることだけではなく、学校の新設や、逆に淘汰されたりするといった新陳代謝が必要なのです。

獣医学部を一つ開設するだけで、「岩盤規制」という言葉が出てくること自体がおかしな話です。また、高齢者が増えているのに、医学部の定員を減らすべきだという議論もあります。財政の問題もありますが、既得権益の影がちらつきます。

日本は、元々獣医学科などもそうですがその数を少なくしておいて、既得権益を守ろうという考え方です。法科大学院の定数を減らそうとしていることについても同じことが言えます。一方、米国は数を増やして競争原理を働かせることで顧客の便宜を図り、その上で優勝劣敗になればいいという考え方をしています。

もちろん加計学園の問題では、本当に安倍首相が特別な配慮をしたのであれば、絶対に許されることではありません。ただ、その疑惑だけに目を奪われてほしくないのです。この国のあるべき姿を考えると、そこにはもっと本質的に議論しなければいけない問題が数多くあるのです。

【小宮 一慶】

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