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日銀は『脱・金融緩和』に向かえるか

今年も残すところ少なくなりました。メルマガもこの号が今年の最終回です。前号で2018年の日本経済を展望しましたが、もうひとつ、来年は日銀の政策に変更があるのかを注意深く見ておかなければなりません。日銀の政策次第では、為替相場が大きく動いたり、ひいては日本経済全体に大きな影響が出る可能性があるからです。

米国では、中央銀行であるFRBが政策金利(銀行間で1日だけお金を貸し借りする金利)を12月に0.25%引き上げ、1.25%から1.5%の間に誘導することとしました。そして、2018年には3度利上げをする予定だとしていますから、このまま米国経済に大きな異常がなければ、来年中には短期金利は2%程度まで上昇することとなります。量的緩和で膨れた市中の資金も吸い上げの方針となっています。短期金利を上昇させ、かつ市中の資金も引き上げられる方向なので、長期金利も高い確率で上昇すると考えられます。
欧州は、現状、日本よりもマイナス金利を深掘りしていますが、EUの中央銀行であるECB(欧州中央銀行)は量的緩和の規模の縮小をすでに発表しており、順調にいけば、2018年の夏あたりからの金利の上昇を示唆しています。

一方、日銀は、12月の政策決定会合でも量的緩和の維持を表明しています。日本だけが「脱・金融緩和」から数歩出遅れているという現状です。
私はその裏には、今年の10月で前年比0.8%程度まで上昇している消費者物価がこの先、上昇幅が落ちる可能性があることを日銀は懸念しているのではないかと考えています。日銀は2%の上昇を目標にしています。

もう少し詳しく見てみましょう。消費者物価は、2016年の間は下落を続けましたが、今年初めから前年比でプラスに転じました。それは、輸入物価の動きとぴったり一致しています。輸入物価も今年1月から上昇を始め、10月で前年比15%程度のプラスとなっています。

輸入物価が上がり始めた要因は主に2つあります。ひとつは為替相場です。たとえば、2016年の夏から10月頃にかけてのドル‐円相場は101円から103円程度でした。1年後の今年の同時期は112円前後です。輸入は原油をはじめドル建てが多いですから、同じ価格で同じ数量を輸入しても、為替相場の影響で10%程度輸入物価が上昇するのです。
もうひとつの要因は原油価格です。ドバイ原油で2016年の夏あたりは40ドル台前半だったのが、1年後には60ドル近くまで上昇しています。これら2つの要因が輸入物価を上昇させ、消費者物価に影響を与えているのです。

しかし、ドル‐円相場は、昨年、トランプ大統領が選ばれたころから円安に転じ、昨年末には110円を超えています。ドバイ原油はOPECの減産合意もあり、昨年暮れで50ドル台となり、現状は先ほど述べたように60ドル程度です。そうなると、今年の11月、12月あたりから、輸入物価に関しては前年比でドル‐円相場で上昇した分の伸びがなくなると考えられ、それが消費者物価の上昇を抑えるのではないかと私は考えています。
そうなると日銀は、量的緩和の縮小(テーパリング)に踏み切れなくなります。そのことは日米金利差の拡大をもたらし、日本だけが「異常」な状態となることをクローズアップさせます。2018年度予算も閣議決定され、97.7兆円規模と膨張に十分な歯止めがかからず、対名目GDP比では世界最悪の財政状況から脱せられるめどは全く立っていません。賃上げが進み、そのことで健全に物価上昇すれば良い方向に向かいますが、果たして2018年はその方向に向かえるのか心配な状況です。

不安を助長する文章を書いて恐縮です。皆様には良いお年をお迎えください。来年もよろしくお願いいたします。

【小宮 一慶】

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