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時には不自由な思いをする

関西での強烈な台風や北海道での強い地震の被害にあわれた皆さまに心よりお見舞い申し上げます。今年は7月の豪雨災害もあり、本当に災害の多い年だと思います。

さて、先日、愛知県一宮市にある顧問先さんの病院で定例の1泊2日の人間ドックを受けました。もう20年近くそのドックを受けており、スタッフの中には知り合いが多くいるので快適に2日間を過ごせるのですが、検査を行うためにある種の制約を受けます。たとえば、前日の夜9時以降は食事をしない、2日目は朝から胃カメラの検査を行うので、水の摂取も制限するなどです。とくに、初日は朝に東京から新幹線で移動することもあり、早朝に起きて何も食べず、水分補給も制限しながら一宮まで行き、1日目の検査の途中の午後2時過ぎまで一切食事をしないというのも、災害の被害を受けた方とは比べ物にはならないものの、結構つらいものがありました。

普段も、自分なりには食事などでは節制をしているほうだと思いますが、それでも、食べたい時間に食事や水分を採っています。でも、検診では、普段通りとはいきません。しかし、たまに不自由な思いをすることが、普段の生活の有難さを思い起こさせてくれるのだと思います。

一方、私は出張に出ることも多く、そんなときに万葉集に出てくる有間皇子が作った「家にあれば笥に盛る飯も草枕旅にしあれば椎の葉に盛る」という歌を思い出すことがよくあります。家に居て普段の生活をしていれば「笥(け、食べ物を入れる器)に盛るご飯も旅に出ているので椎の葉に盛って食べるのだという意味で、旅に出ていると何かと不自由のあるものです。実はこの歌は、有間皇子が権力闘争に敗れ流刑地に向かうときに読まれたものだそうですが、いずれにしても、普段の快適な生活に慣れてしまっていては、ちょっとした不自由にも不快を感じるものです。とくに、ハイテクで便利なこの時代では、少しのことでも不自由を感じるかもしれませんね。普段から、少し、不自由なことも時々経験しておくことが、日常生活の有難さを感じる意味でも、いいのではないのでしょうか。

私のアメリカ人の知人が、年に何日か山の中に入って、電気や水道のないところで暮らすのもいいものだと言っていたことを思い出します。私も若い頃にカンボジアのPKOに選挙監視員として参加し、電気、ガス、水道のない投票所で何日か暮らしましたし、倉庫で寝たこともありましたが、そのことを思い出すと大抵のことは辛抱できます。

おかげさまで、人間ドックの結果に大きな問題はありませんでした。2006年にそのドックで初期の肺がんが見つかり、右肺の4分の1ほどを切除してからは、人間ドックで大丈夫だったら「今後一年分の生きるパスポートをもらった」と思うようになりました。もちろん、事故などで一年生きられないかもしれませんが、とにかく次の一年をしっかり生きようと思っています。

【小宮 一慶(こみや かずよし) 】
経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問、名古屋大学客員教授。
フィールドでの実践をもとに、企業規模、業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年百回以上の講演を行う。新聞・雑誌、テレビ等の執筆・出演も数多くこなす。著書130冊超、累計発行部数350万部以上。

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