ホーム > 小宮一慶のモノの見方・考え方 > 社会保障の現実と財源に目を向けるべき

社会保障の現実と財源に目を向けるべき

10月1日に消費税率が現状の8%から10%に上がります。安倍首相は「10年間は消費税率の引き上げはない」と明言しましたが果たして本当にそれで大丈夫なのでしょうか。
8月12日の読売新聞朝刊1面トップ記事に、個人の選択で年金支給開始を75歳まで繰り下げる(給付は8割増)ことも可能になるとの記事がありました。それだけ年金財政も苦しいのです。

同じ新聞の3面に、社会保障給付費の見通しについての政府の試算が載っていました。2018年と2025年、2040年の試算です。年金に関しては、18年、25年、40年でそれぞれ、56.7兆円、59.9兆円、73.2兆円と増えていきます。25年まででも18年よりも3.2兆円増えます。
しかし、実はもっと大変なのは医療費と介護費です。数字ばかり並んで恐縮ですが、医療費から見ていくと、39.2兆円(18年)が47.4から47.8兆円(25年)、さらに66.7から68.5兆円(40年)と増加します。
介護費はもっと伸びが大きく、10.7兆円(18年)、15.3兆円(25年)、25.8兆円(40年)です。
2025年までの増加分だけでも医療費で最低8.2兆円、介護費で4.6兆円、合計で12.8兆円。それに先ほどの年金増加分3.2兆円に、その他の増加分3.1兆円を加えると、2025年までに約19兆円の社会保障給付の増加が見込まれているのです。

消費税率を1%上げると、約2.7兆円の税収アップになると試算されていますが、今回2%上げても、5.4兆円ほどです。来年は2020年で、2025年はあっという間にきますが、財源の不足分をどういうふうに賄うのでしょうか。
今年度の一般会計予算は101兆円強ですが、そのうち税収で賄えるのは60兆円強の予定です。残りは国債の発行や資産売却などで補っているのです。戦後最長の景気拡大をしている現状でもその程度の税収で、今後米中摩擦や円高があると税収が落ち込む懸念があります。対名目GDP比で先進国中最悪の財政状況の中、「いくら国債を発行しても大丈夫。日本がその実験台」というMMT理論を信じて財政赤字を拡大するのでしょうか。

先の参院選では「年金だけでは2000万円不足する」ということが大きな争点となりましたが、実は医療や介護も財政的には危機的な状況になっているのです。年金のほうは、冒頭に述べたような支給開始年齢の繰り下げや、場合によっては、現在40歳代の人たちから支給開始年齢を例えば一律に67歳に引き上げるなどの対策で、何とか乗り切れる可能性はあります。しかし、医療に関しては、病気になった人の治療を「2年遅らせる」というような選択肢はありません。そして、先に見たように年金よりも医療や介護のほうが財政的には深刻なのです。現状、年金も医療や介護も社会保険料で不足する分を一般会計からそれぞれ10兆円単位で補填していますが、今後、その額が急増せざるをえません。

個人レベルでは、ご自身の将来の生活レベルと年金などの収入をきちんと把握することが大切ですが、国家レベルでも歳入と歳出の予測をきちんと立てることが大切なことは言うまでもありません。

【小宮 一慶(こみや かずよし) 】
経営コンサルタント。株式会社小宮コンサルタンツ代表取締役会長CEO。十数社の非常勤取締役や監査役、顧問、名古屋大学客員教授。
フィールドでの実践をもとに、企業規模、業種を問わず、幅広く経営コンサルティング活動を行う一方、年百回以上の講演を行う。新聞・雑誌、テレビ等の執筆・出演も数多くこなす。著書130冊超、累計発行部数350万部以上。

  • twitter
  • Facebook
  • Google+
  • LINE