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春は別れの季節だが・・・

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私の住む東京でも春を感じる頃となりました。春は卒業式や就職、転勤など、なにかと人との別れがある季節でもあります。私の周りでもいくつかのお別れがあります。今回のメルマガはその中のひと組の老夫婦のお話を中心に書かせていただきます。少しセンチメンタルで申し訳ありません。

私の家の近くに、18年前からやっている小さな洋食屋さんがあります。厨房で料理を作るご主人が現在78歳、一緒に店を切り盛りする奥さんは76歳です。18年前まではもう少し都心で、従業員さんも使ってやっていたらしいのですが、ご主人が60歳になったのを機に、前の店をたたみ、現在の場所で再開業をしたということでした。今の店は、あまり場所の良いところにはありません。その理由は、お客さまが入り過ぎるのは困るということで駅から結構離れた場所をわざわざ選んだそうです。しかし、美味しい上に値段が超リーズナブル(家族4人で5千円かかりません)で、また店の雰囲気が和やかなので地元ではかなりの人気で常連のお客さまがたくさんいます。

わが家には大学生の息子と高校生の娘がいますが、彼らは本当に小さいときからこのお店にはお世話になっていました。ご夫婦はいまでもすごくお元気なのですが、残念ながらそろそろ引退ということで、この3月末で閉店と決まりました。3月中に私たち家族全員で他に行けそうな日がなかったので、先々週末におそらく最後ということでその洋食屋さんに行きました。この時ばかりは、やはり名残を惜しむ常連のお客さまで小さなお店が一杯でしたが、少し待ってお店に入り、お店のおばさんとゆっくりお話ししました。食事が終わるころに、「焼き立てができたよ」と言って、プリンをサービスしてくれました。これまでも、よく色んなものをサービスしてくれたのですが、この日はもう最後だとお互いに思いながら、そのプリンを食べ、わざと何もないかのように、いつものように「ごちそうさま」と言って、店を出ました。もう、おそらくこのご夫婦とお会いすることはないと思いながら。

実は、この洋食屋さんのご夫婦は二人の娘さんが暮らすカリフォルニアに近いうちに引っ越すのです。老後を米国で暮らすと決断するのは大変だったかもしれませんが、日本人も海外で活躍する人が増え、今後もこういう方々が増えるかもしれませんね。いずれにしても、彼らのご多幸とご健康をお祈りするばかりです。

そのほかにも、私の周りで親しい人たちが転勤などで私の近くを去っていきます。私自身は、年のうち3分の1くらいは東京を離れ、いろんな地方を、場合によっては外国を行ったり来たりしていますから、その方たちとも会える機会がありますが、それでも親しい人たちが近くを去ることは大変寂しいことです。

皆さんにとってそれぞれの「卒業」です。英語で卒業式のことをcommencement(コメンスメント)と言います。Commenceという動詞の名詞形ですが、この動詞には「始める、始まる」という意味があります。そう、卒業は始まりなのです。そう思うと少し気持ちが楽になりますね。それでもやはり寂しいですが、皆さんの周りでも「卒業」していかれる方がいらっしゃるかもしれませんね。

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