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ノーを言うのは簡単だから、何かできることを考える

仕事の中では、様々なご相談やご依頼、お問い合わせが寄せられます。
もちろんできる限りお応えしたいと思いつつも、残念ながらお応えできないこともたくさんあります。「申し訳ございません、あいにく○○はできかねます」という言葉を使わざるを得ないことも、場合によってはあるでしょう。

そんな時に、いつも一瞬頭をよぎる言葉があります。「ノーを言うのは簡単」。
“できません” “わかりません” “ありません” “しりません”は、何も考えなくても返せる言葉です。ノーと言いたくなる気持ちをグッと押さえて、少しだけ考えてみたいものです。何らかの方法で、ご要望に応えるやり方はないのか、ご依頼のことはできなくても替わりの方法はないのか、ご要望は叶わないとしても、相手の気持ちに沿うために何かできることはないのか。そこまで考えて、対応してもらえたら、例えご要望は叶わなかったとしても、「ここまでしてもらったんだから、仕方ないな」と、相手の心に納得感が生まれるのではないかと思うのです。
以前、ある会合にご参加いただいたお客さまから、会場に名刺入れを忘れたと、後からご連絡をいただいたことがありました。

会合の冒頭には、参加者数人と名刺交換をしているので、その時は確実に名刺入れを持っていたこと。会場を出て、どこにも寄らず駅まで行き、駅で忘れ物に気づいたので、会場で忘れたことに間違いないとおっしゃいます。ICカードなどの貴重品も入っており、どうしても探したいというお気持ちも、ご連絡から伝わってきました。

すぐに会場に確認をしましたが見当たりません。日を改めて、会場の係の方に探してもらい、全館からの遺失物も確認していただきましたが、それでも見つかりませんでした。

まずは会合の担当者からお客さまに、残念ながら名刺入れが見つからなかったことをご返事しました。直接その場に立ち会ったわけではないのですが、お客さまにしてみれば、仕方ないとは思いながらも、絶対あの場所に忘れたはずなのにという、やりきれないお気持ちだったことは、容易に想像ができました。

何か他にできることはないかと考え、会合に出席した方全員に、確認することを思い付きました。色やブランドをお伝えして、そのような名刺入れをご存じではないか、間違ってご自分の荷物に紛れ込んでいなかったでしょうかと、お一人お一人に確認させていただきました。幸いご出席の皆さまとご連絡を取ることができ、ご自身のお荷物を再度確認していただいたのですが、やはりどなたもご存じないとのことで、残念ながら名刺入れは見つかりませんでした。

結果的にこの時は、残念ながらお客さまのご期待にはお応えできませんでした。ですが、会場を探してなかったからそれで終わるのではなく、さらに踏み込んでできることがあると分かったのは、大きな学びになりました。


そして、もし私がお客さまの立場だったら、果たして真剣に探してくれたのだろうかと思うのです。自分の大事なものを失くしてしまったという気持ちを受け止めて、それを一緒になって探してくれた、何度も調べてくれたということが、相手の気持ちに寄り添うことではないでしょうか。

「ノーを言うのは簡単」です。その言葉を返す前に、少しだけ考えてみたいものです。何かできることはないでしょうか。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。その後、移動体通信業界に転じ、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツに入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修等の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。
■担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修

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