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状況変化に対応するための注意力

ある雑誌のインタビューで、脳神経外科のお医者様が「ミス防止術」をテーマにお話していらっしゃいました。「繊細な手術を長時間続けるには、高度な集中力が必要ではないか」という問いかけに対して、

「過度な集中力は不要。注意を散漫にすることで、さまざまな変化が飛び込んできて、臨機応変に対応できる」

と答えていらっしゃいました。

私の業務時間を振り返ってみると、来客や電話対応、急ぎのメール、上司からの指示や連絡、社内外の調整等が頻繁に入ってきます。上司の動きを見ていて、次の対応に備えておく必要もありますし、社内で動いている様々な業務の状況、社内で話されている会話もなんとなく耳に入れておくことによって、臨機応変に対応できます。秘書の仕事でも、目の前の仕事に集中し過ぎると、それ以外の状況が目に入らなくなってしまうということは、日々経験することです。あえて注意を散漫にしておくことで、様々な変化が目に入り、臨機応変に対応できるというのは、お医者様も秘書も同じだなと思い、興味深くその記事を読みました。


オフィスでは、時々顔を上げて社内全体をなんとなく見渡すのが癖になっています。誰がどこにいて何をしているか。応接室や会議室のどこを今使っていて、来客は何時からどの部屋に入っているのか。社内全体の様子を広く遠く見渡すことで把握するため、時々顔を上げて周囲をぐるっと眺めているのです。

どこかでフォローが必要になった時、誰かがカバーに入ったのを見届ければ、自分は別な場所にカバーに入ればよいと判断できます。来客が長引いているようであれば、お茶を入れ替える必要がありますし、次の来客や応接室の使用に影響するようでしたら、対応しなければなりません。上司から急ぎの指示があれば、そちらに入ることもあります。当社ではセミナーを開催することも多いため、ご参加の皆さまが休憩時間になると、トイレや喫煙場所を利用されます。休憩時間の前後には、トイレや喫煙スペースがきれいになっているかを確認しておくことはセミナー担当者の仕事ではありますが、手が回らない時には、社内でフォローし合うことも必要です。昼食休憩やトイレに立つ時でさえ、社内を把握しておけば、電話に出られる人がいない等の状況を防ぐことができるのです。当社のように社員数の少ないオフィスであれば、必ず必要になることですが、日頃から気にかけていてこそ、さりげなくカバーし合える体制が取れるのです。

もちろん自分が今やっている仕事に適度に集中することは必要です。しかし集中しすぎて、お客さまがいらしていることにも気づかない。電話が鳴っていても反応が遅れるということでは、広範囲に業務をカバーして動くことができません。全体を見て、自分がどこにポジションを取ればよいかを俯瞰するために、時々全体を眺めるという動作を無意識にしているのです。


気配という言葉があります。気づく人というのは、広く全体に注意を散らしておくことで、この気配を察知し、人より先に動くことができるのです。エレベーターが開いた気配、電話が鳴る瞬間のかすかな音やランプの点灯。窓の外に広がる雨雲を見て、先に傘立てを用意しておいたり、応接室から聞こえるグラスの中のカランという氷の音で、冷たい飲み物が空になったことを察知します。

いつも書類やパソコンから顔を離さずに仕事していませんか。時々顔を上げて、なんとなくフロア全体を見渡してしましょう。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
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