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相手の指示を引き出す「受け皿」と「呼び水」

「上司が忙しくて、全然話を聞いてもらえず、必要な指示がもらえない」という悩みを聞きます。いつも忙しく時間のない上司には、短時間で的確に用件を伝え、必要な指示や判断を引き出すことが求められます。それには、こちらからどのように話を持っていくか、その最初のアクションがとても重要なのです。

上司や同僚に話しかける様子を観察していると、相手が話しを聞く準備が整わないうちに、話し始める人がいます。まずは相手に、話を聞くという決断をしてもらうことから始まります。「〇〇についてご判断いただきたいことがあるのですが、2分ほどお時間いただけますか。」「〇〇についてご報告したいのですが、本日お時間いただけるタイミングはおありですか。」など声をかけ、上司の了解を取ります。「分かりました」「いいですよ」という了解の言葉を発することで、相手はこれから話を聞くというスイッチが入ります。


ここで伝えるべきことは、今から話す内容のタイトルのようなものです。忙しく時間のない上司は、この声掛けの内容によって、今聞くべきか、後に回してもよいかを判断しています。緊急性が高いなら、「そろそろ手配が必要なので、“スケジュール”について確認したいのですが」「“講演タイトル”についてご決定いただく日が迫っておりますので」「“本日ご来社のお客様”に関して、お伝えしたいことがあります」など、「今」である必要を伝えます。一方で上司が忙しそうな様子であれば、期限に余裕がある場合は、「お時間ないようでしたら、明日でも構わない件です」「この後の方がよいですか」等、選択肢を提示することもあります。

話し始めは、相手の頭の中に、話の「受け皿」を作ることをイメージして話します。いきなり細部から話し出される話は、分かりにくいですよね。相手の頭の中に、「受け皿」ができていない状態で話し始めると、相手はその話をどのように処理したらよいか、即座に判断ができないものです。どんな大きさ、規模感の話なのか?いい話なのか、悪い話なのか?耳に入れておけばよいだけなのか、アクションを取る必要があるのか?どのレベルの判断が必要になるのか?など、これから話される内容を、どんな重要性で、どんな優先度で、どんな態度で聞くべきかを用意できる情報を先に提示します。私はこれを、話の「受け皿」と考えています。詳細を話す前にまず、相手の頭の中に「受け皿」を用意してもらうことで、相手が理解しやすく、必要な判断を行ないやすい状態を作り出すことができます。

もう一つ、私が行なっているのは、「呼び水」を注ぐことです。

例えば、上司に報告や連絡をする時。これは初めて聞く話なのか、以前に話したことの続報なのかを、最初に理解できるような声掛けをしています。「新規のご依頼が来ております」「先日ご承諾いただいた講演について、内容のご相談なのですが」等、このひと言によって上司は、これから聞く話は初めての内容なのか、すでに対応が進んでいる件なのか、理解して、次の判断ができるのです。いわば、判断を引き出しやすくするための「呼び水」です。

ここでのポイントは、上司が過去に、どんな情報を元に、何を決定したかを踏まえて、次の話ができることです。上司といえども、過去の細かな指示や判断をすべて覚えているとは限りません。ですから、ここに至った経緯をひと言伝えることによって、上司にそれを確認してもらい、スムーズに次の話に進めることができるのです。また、同じような判断をしなければならない時に、「前回はこういう情報を元に、こう判断した」ということを伝えることで、それに倣って判断がしやすくなります。

この手順を飛ばすと、いったん決定したことがひっくり返ったり、判断が変わったりすることが起きます。また、そもそも判断できるだけの情報や判断基準が示されないために、判断が後回しにされることもあります。それを防ぐためにも、判断の「呼び水」が必要です。


上司に、話を聞くスイッチを入れてもらい、「受け皿」を作って話し、指示を引き出す「呼び水」を注ぐ。話の伝わり方、指示の出方が格段に変わります。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
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