ホーム > ビジネスに活かす“秘書力” > 「気づく」人と「気づかない」人の違い

「気づく」人と「気づかない」人の違い

先日、ある講演会の会場で、こんな光景を目にしました。

スタート時点で会場はほぼ満席。遅れて来場したお客さまを、空いている席に案内するスタッフが、会場後方に控えていました。

開始から20分ほど遅れて、女性のお客さまが入ってきました。案内係が空席へと誘導し、お客さまがその席に座ろうという仕草を見せたところで、案内係は役目を果たし、お客さまには背を向けて、自分の所定の位置である会場後方へと戻りかけていました。

案内された席にそのまま座るのかなと思った瞬間、そのお客さまは、なぜかパッと、そのスタッフの方を振り向いたのです。

なぜ振り返ったかは、分かりません。このお客さま、手にたくさん荷物を抱えていたので、もしかしたら椅子を引いて欲しかったのかもしれませんし、その荷物を置く場所がどこかにないかと、スタッフに訊ねたかったのかもしれません。あるいは案内された席に一度は座ろうとしたけれど、いや別な席がいいなと思い直したのかもしれません(私もそういうことがよくあります)。他にも、何かスタッフに聞きたいことがあったのか。気にかかることがあったのかもしれません。

でも残念ながら、そのスタッフはすでにお客さまに背を向けていたので、お客さまの視線に気がつくことはありませんでした。お客さまも諦めて、前に向き直り、何事もなかったように席に座りました。

スタッフの方が気づいてくれなかったからと言って、このお客さまは文句を言ったり、クレームを言ったりすることはないでしょう。座った瞬間に忘れてしまうような些細なことだったのかもしれません。でも、こんな些細な瞬間が、日常生活には意外にあるものです。こんな時、さりげなく気づいてくれる人と、全く気づいてくれない人。

この違いって、何でしょう?


このセミナー会場での案内係の人は、「お客さまを空いた席に誘導する」ことが自分の役目だと思っています。ですから、席に誘導した時点で自分の仕事は終わり、そこでお客さまから気持ちを離してしまっているのです。案内した席に、お客さまは落ち着いて座ったのか。セミナーにすんなり入れているのかは、もう自分の関心の外にあるため、お客さまが発してるサインをキャッチできなかったのでしょう。

一方「気づく」人は違います。この場合であれば、「お客さまが落ち着いて、セミナーを受講できる状態になる」ことがゴールだと思っています。席に誘導するのは、そのための1つのアクションでしかありません。席に案内しつつ、お客さまがスムーズに座れたか。落ち着かない様子や不都合はないか。支障なくセミナーに入れているか。そんな様子を感じながら、お客さまがゴールとする状態になったことを見届けてから、スッと気持ちを離しているのです。

見届けると言っても、そばにピッタリ張り付いている必要はありません。さりげなくお客さまから離れながらも、お客さまの様子を視界に留めていれば、何か支障のある様子、困っている様子などが目に入ってきますし、ゴールを見据えていれば、呼ばれる前に気づいて、先回りして対応することもできます。

同様のことは、日々の仕事の中でたくさんあります。

自分がアクションすることがゴールだと思っていると、例えば「お茶を出して」と言われたら、「お茶を出して」終わってしまいます。お茶を出すことがゴールではなく、お客さまが快適な状態でお待ちいただくことがゴールだと考えれば、空調は?お荷物は?コートは?雨の日ならお召し物は?不快要素を取り除き、気持ちよく過ごしていただくために、気がつくことはたくさんありそうです。

自分がアクションすることがゴールではなく、相手が目指す状態になることがゴールです。相手の状態をゴールにすることで、「気づく」人に近づけます。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
研修、講演のご相談はこちら

コラム「ビジネスに活かす秘書力」へのご意見、ご感想をお聞かせください

  • twitter
  • Facebook
  • Google+
  • LINE