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無意識に相手を不快にしていませんか~パーソナルスペースを尊重する~

満員電車の中で、こんな場面に遭遇したことはありませんか。

混んでいるドア付近に立つ人は、たいてい皆ドアの方を正面にして、同じ方向を向いて立っていますよね。その中でたまに一人だけ、違う向きで立つ人がいます。皆同じ方法に向かって立っている中で一人が逆向きで立つと、その人の前に立つ見知らぬ人は、至近距離で他人と正面から向き合うことになります。これはとても緊張感が高く、不快な思いを必死に堪えて、次の停車駅まで時間を過ごすことになります。

人は、パーソナルスペースという、他人に近付かれると不快に感じる空間を持っています。そもそも満員電車では、このパーソナルスペースが侵されるので、非常に不快感が高い状態です。少しでもそれを緩和しようと、それぞれスマホを見たり、ドア上に掲示している車内広告を見たりして、他人との心理的な距離を保とうとするのですが、至近距離で向き合って立つことになると、それさえもできなくなります。他人とごく近い距離で、視線さえも外せずに顔を向け合うことで、ストレスはさらに高まることになるのです。


こういう場面に遭遇すると、「逆向きで立っているこの人は、この状況をどう感じているのだろう?」とついつい観察してしまいます。

本人も居心地が悪そうに下を向いていたりすると、お気の毒に、混んだ車内で、自分で方向を上手くコントロールできなかったのかもしれないと想像したりします。満員電車に不慣れで、うっかり皆と違う向きになってしまったのかもと、考えたりもします。しかし、気にしている様子もなく、平然と立っている様子であれば、この人は他人のパーソナルスペースに鈍感な人かもしれないと想像します。その居心地の悪さを感じずに、他人と向き合って立っていられるなら、日頃人と関わる場面で、無意識に相手に不快感を与えているかもしれないのです。

人と人が物理的に接近する時には、お互いの心地よい距離を保つことが大切です。仕事でも、相手に不快感を与えず、快適なコミュニケーションを図る上で、パーソナルスペースに配慮する場面はとても多いものです。

例えば、報連相を行なうとき。無言でいきなり上司の席に近づいてはいませんか。突然自分のパーソナルスペースに入って来られたら、上司はとても不快に感じるでしょう。何かに集中していれば、近くに人がいることに気づかず驚かせてしまいますし、人に見られては困る内容の書類やメールを開いている可能性もあります。

まずは少し遠い距離から、「ただいま3分ほどよろしいでしょうか?」等と声をかけ、許可を得てから席に近づきます。

「少し遠い距離」がどれくらいかは、オフィスのレイアウトやお互いの席の位置等により一概には言えません。パーソナルスペースでは、ビジネスに適した「社会距離」は120センチ~350センチと言われていますので、まずはこの距離感で声かけし、許可を得て、それより近い距離に入る配慮が必要です。

上司の席に近づいたら、上司の正面を遮らないよう、正面よりやや横の位置に立ちます。特に上司が座っている状態で、真正面に立つと、上司の視界をふさぎ、こちらが見下ろす位置になってしまいます。上司にとって圧迫感があり、部下に見下されているような印象さえ受ける、不快な位置関係です。相手の快適さに配慮すれば、正面よりやや横の位置に立ち、少し腰をかがめた、前傾姿勢で対応することが、上司への気遣いになるのです。(ちなみに秘書検定の面接試験では、この前傾姿勢が重視されます。)

さらに近づいて、近い距離で書類をのぞき込んだり、モニターを一緒に見るようなこともあります。そのような場合も、まずは「失礼します」と声をかけ、それから静かに近づきます。用件が済んだら、静かに1歩下がり、相手のパーソナルスペース内に、長く留まらないことも配慮です。

初対面の方と名刺交換する場合は、お互いに向き合って正面に立ち、しっかり目を合わせて挨拶をしますが、その後も立ったまま会話を続けるような場面であれば、さりげなく斜めの位置に動き、真正面で向き合わない位置に立つ方が、お互いに話しやすいものです。

相手のパーソナルスペースを尊重することで、相手の不快感やストレスを取り除くことができます。「なぜか話しやすい」「一緒にいて心地よい」という好感や信頼感は、こんな無意識の心遣いの上に成り立つものなのです。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
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