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目の前に集中するための、ささやかな訓練

秘書という仕事に、皆さんはどんなイメージを持っていますか。
ある人から、「優雅」という言葉を言われて、思わず苦笑いしてしまいました。もし秘書が「優雅」に見えているとしたら、裏では突発の依頼に髪を振り乱し、緊急対応に走り回っていることを、上手に隠せているのですね。プラスに捉えたいと思います。

「優雅」かどうかはさておき、「丁寧さ」「細やかさ」は求められる仕事です。ところが私自身はせっかちな性格で、エレベーターに乗ったらまず閉ボタンを先に押し、さらに慌ただしく行き先階数ボタンを押すタイプです。この段取りの方が絶対に早いと力説し、「たいして違わないのに」と呆れられたこともあるくらいです。

そんな性格ですから、仕事においても、余計なことはしたくない。無駄な時間はかけたくないという考え方です。たくさんの仕事を手際よく時間内に処理することは比較的得意なのですが、スピード優先のあまり、ひとつひとつの仕事への丁寧さ、細やかさが、ともすると足りなくなるタイプだと自覚しています。

例えば来客が多い、とある日。
同時刻に重なった来客にも、テキパキと対応し、スムーズなご案内で乗り切ります。ところが慌ただしい一日を終えてふと振り返ると、どんな方が、どんなお顔で、どんなご用件でいらっしゃったのか、思い出せないことがあります。どんなご様子で、どんな服装で、どんな会話を交わしたのか。その瞬間瞬間、目の前のお客さまにしっかり心を向けていなければ、テキパキ対応はできても、必要なことに気づけなかったり、心の感じられない対応になっているかもしれないのです。

スピーディーに効率よく働きながらも、その瞬間に心を込めて、丁寧な仕事をする。そのために、目の前のことに集中する訓練をしなければと思い、毎日意識して行なっている動作があります。

「できるだけ音を立てないように、ドアを開け閉めする」という、とても当たり前のささやかなことです。


ドアから勢いよく飛び出していき、その後バーンとドアが閉まる大きな音が聞こえることってありますよね。ドアを開閉するということは、次にどこかに行ったり、何かをしたりするわけですが、次のことに気持ちが向かっていると、ドアから心が離れて、音を立てて閉まります。音を立てないように開閉するには、最後までドアに手を添え、ドアが立てる音に集中しなければなりません。ドアを閉めるというその瞬間に集中する訓練なのです。

時間に追われている時などは、ドアが開いた瞬間に手を離して、小走りに移動したい気持ちに駆られました。ドアが閉まり切るまでがじれったくて、強引にドアを閉めたくなったこともあります。乱暴に閉めたためにバンッと音がして、「ああ、また気持ちが急いていたなあ」と反省することも多々ありました。

この動作を日々繰り返すうちに、いつしか手を添えて丁寧に開閉することが、以前ほど気にならなくなりました。じれったさも感じなくなり、たかがドアの開閉に数秒かかっても、何の支障もないんだと思えるようになりました。仕事中、少し焦っている時などは、ドアの開閉によって落ち着きを取り戻すことができ、心を切り替えるスイッチにもなっています。

心の状態は所作に表れ、また所作によって心が整います。その瞬間に集中し、心を込めて丁寧に行なう訓練を、日々の生活に取り入れてみてはいかがでしょう。

 

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
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