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「知っている」ことを「やっている」ことへ

秘書としての実務経験を踏まえて、ビジネスマナーをお教えする機会が多くなりました。

私自身、秘書になってからマナーを学び直し、必死に身に着けてきたことも少なくありません。未経験で秘書になった私から見ると、他社の秘書の方々はマナーの先生のようでした。お辞儀の仕方、笑顔の作り方、電話応対、敬語表現等、知識としては知っていても、自然にそれらを実践できるようにならなければ、相手に失礼のない対応はできません。

「習熟の段階」をご存じでしょうか。

「知らない」「知っている」「できる」「やっている」という段階を経て、物事を習得したり、身に着けたりすることができるというものです。

電話応対を例にご説明しましょう。


相手がお名前を名乗ったら、「〇〇会社の〇〇様でいらっしゃいますね、いつもお世話になっております。」と、相手の会社名、お名前を復唱します。復唱によって、相手は、自分が言っていることをこの応対者は正しく聞き取ってくれている、理解してくれていると分かり、安心して用件を切り出すことができるのです。

ところがこの復唱、実践できている会社は少ないようです。復唱するということをご存じないのでしょう。これが「知らない」という段階です。知らないので、悪気なく無意識にやっています。無意識ですので、自分が電話をかける側に立った時にも、相手が復唱しているかどうかには気がつかないのです。

研修で復唱の大切さ、この効果をお伝えして、初めてそれを知ります。自分は全く復唱していないなあとか、そう言えば電話をかけた時、復唱してもらったこともあったなあ等と、初めて復唱ということを意識するようになります。これが「知っている」という段階です。

ただし、復唱を知っているからと言って、実際の電話応対で復唱がしっかりできるわけではありません。多くの人は、この「知っている」けれど、できてない状態にあるものです。挨拶が大事だと知っているけど、実際は挨拶できない。笑顔が大事だと知っているけど、全然笑顔がなくお客さま対応をしている等、上げていけばきりがありません。これを「できる」という状態に持っていくために、日々繰り返し実践することが必要なのです。

電話応対の時に、復唱をしようと意識することから始まります。
今日は電話に出たら、復唱してみようと心に決め、とにかく行動してみるのです。実際には、復唱しようとしたら、言葉がもつれてスムーズに言えなかったとか、電話を切ってから、ああ復唱を忘れたとか、復唱しようとしたら、相手の会社名もお名前も聞き取れていなかったとか、こういう状態を毎日繰り返すわけです。

今までやっていなかったことを新たにするわけですから、当然ストレスがかかります。復唱しようとすると、会話が途切れてしまった等、違和感を感じることもあります。復唱しようとすると、却って会話がもたつくので、やっぱり復唱しない方がいいのではないかと、違和感を理由に、元のやり方に戻ろうとすることも多くあります。

でも実はこの違和感、新しいことにチャレンジしている証拠です。今まで無意識に行っていたこを意識的にやっているのですから、不慣れでスムーズにいかないのは当然なのです。それでも実践を続けていくことで、いつの間にかこの違和感がなくなってきたら、身に着いてきたという目安です。いつも復唱、復唱と自分に言い聞かせ、かなり意識的に電話応対をしていたのに、気がつくと、何も考えなくても自然に復唱の言葉が口をついて出ていたという状態になります。意識的に取り組んでいたことが無意識に、気が付いたら「やっている」という状態になれば、新しいことをひとつ、身に着けたと言えるでしょう。

ビジネスマナーは知っているだけでは意味がありません。身に着け、無意識に実践できてこそ活きるものです。「知っている」ことを「できる」ことへ。そして気がつけば自然に「やっている」ことを、ひとつずつ増やして行きましょう。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修、秘書研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇マナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
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