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「なぜ」を考えるのが、生きたマナーを身につける近道

テレビ朝日のドラマ『相棒』が好きです。ファーストシーズンからほぼ全話観ていると思うのですが、ドラマの中のシーンで、以前からとても気になっていることがありました。

水谷豊さん演じる主人公「杉下右京」が、捜査のために個人のお宅や会社を訪問する場面がよく出てきます。そんな時右京さんは必ずコートを着たまま、お家に上がったり会社の応接室に入って、相手と対面し、決してコートを脱がないのです。

皆さんもご承知の通り、個人宅や会社を訪問する場合は、相手先に入る前にコートを脱ぐのがマナーです。劇中の右京さんは、イギリス留学の経験を持ち、ブリテッシュスタイルのスーツを完璧に着こなす紳士というキャラクターですから、そんなマナー違反をするはずがありません。気になって調べてみると、欧米と日本のマナーの違いにたどり着きました。


日本では、外のちりやほこりを室内に持ち込まないことが礼儀です。会社であれば、ビルのエントランスやエレベーターホールで、個人のお宅であれば、玄関の外でコートを脱ぎ、マフラーや手袋も外します。脱いだコートは、外側のほこりを包むように裏返し、二つに折って腕にかけて持ちます。若い方の中には、外のちりやほこりに、そこまで気を遣う必要があるのだろうかと思う方もいるでしょうね。茶道をやっている友人が、お客さまがお迎えする朝、茶室を箒で掃き清め、畳を雑巾で乾拭きして、まさに「ちりひとつない」空間を整えている姿を見たときに、なるほどと納得が行ったものです。

一方欧米では、コートを脱がずに建物に入るのがマナーとされます。靴を脱がない欧米の生活スタイルでは、コートを脱ぐことがお家に上がることを意味します。ですから、勧められる前にコートを脱ぐのは失礼とされる行為なのです。

杉下右京という人物は、イギリス流のマナーを実践しているキャラクターが、しっかり作り込まれているのです。ここは日本なんだから、イギリス流を通されるのはおかしいという見方もあるでしょうが、そこは博識で高い教養を持つ右京さん。ドラマの中で不快な印象は受けません。加えて、警察の方が捜査に行く先では、「長居はしません、要件が済んだらすぐに帰ります」という気持ちを表す配慮とも受け取れます。これはこれでよいのでしょう。

マナーは単に決まり事と捉えるのではなく、なぜそうしているのかという本来の意味やその背景を知り、理解することが大切です。私たちの日常生活に深く関わっているものだからこそ、関心を持って見てたり調べたりしてみるとさらに理解が深まります。

相手先を訪問する時はコートを脱ぐことは知っていても、例えば庶民的な居酒屋さんに入る時に、お店の外でコートを脱ぐ人はいませんよね。でもコートを着たまま、案内されたテーブル近くまで行き、隣の席の人が食事をしているすぐ横でコートを脱いだら、隣の席の方はどう思うでしょう。「外のほこりを持ち込まない」という理由を知っていれば、食事をしている人のそばで、ほこりが舞うような動作をすることは控えようと思うのが、思いやりであり気遣いです。それなら、お店の入り口付近でコートを脱いでからテーブルに進んだ方がよさそうだなと考えられるのが、生きたマナーと言えるのです。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修、秘書研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇、ビジネスマナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
■著書『ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
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