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成長の機会は、小さな偶然から

今年の春に『ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)を上梓しました。本をテーマにした研修や講演のお問い合わせ、取材のご依頼をいただき、気がつけば7月が終わろうとしています。このコラムも、2月以降ずっと更新できておらず、「月1回更新」と自分で決めた目標を守れなかったことを、反省する日々でした。

今、私は秘書の仕事のほかに、セミナーの講師や、人材育成の仕事に携わっています。しかし、この会社で秘書の仕事を始めた11年前は、当然そんな話はありませんでした。ですから最初に、自社開催の新入社員研修で、ビジネスマナーを担当してもらえないかと打診を受けたときは、「なぜ秘書の私が研修をするのか」と非常に戸惑い、抵抗を感じました。引き受けざるを得ず、渋々承諾したというのが本音でした。

誰もがやるべき仕事をたくさん抱えて、そのタスクをこなしていうだけで毎日は慌ただしく過ぎていきます。そんな中で、新しい仕事を引き受けたり、自分で目標を設定して取り組んだりすることは、当然負担も増えるでしょう。やると決めたことを後悔するときもあるかもしれません。それでも私は、チャンスがあるならぜひやってみることをお勧めしています。思わぬ仕事が、自分の世界を広げたり、予想もしなかった可能性を掴むことを、数えきれないほど体験したからです。

キャリア理論に「プランド・ハプンスタンス・セオリー(計画された偶発性理論)」というものがあります。


1999年にスタンフォード大学のクルンボルツ教授らが提唱した理論で、「キャリアの8割が予期しない出来事や偶然の出会いによって決定される」「偶然の出来事を意図的・計画的に望ましいキャリアの機会に変えていくべき」と唱えています。そして「偶然の出来事」を「望ましいキャリアの機会」に変えるための行動指針として、次の5つを掲げています。

1.好奇心(Curiosity)  :新しいものに興味を持つ
2.持続性(Persistence) :失敗してもあきらめず努力し続ける
3.柔軟性(Flexiibility):自分の姿勢や態度、行動を環境に合わせて変化させる
4.楽観性(Optimixm)  :きっと何とかなる、何とか出来ると考える
5.冒険心(Risk-taking) :結果がわからなくても行動を起こす

私自身のこれまでのキャリアを振り返ってみても、秘書として今仕事をしていることも、人材育成の仕事に携わっていることも、本を出版したことも、自分が最初から思い描いていたわけでは決してありません。まさに「予期しない出来事や偶然の出会い」が「望ましいキャリアの機会」となり、ここまで導いてくれたという実感があります。

研修を担当してほしいと言われたとき、コラムサイトを作る話が挙がったとき、出版のお話をいただいたとき、もちろん「No」という選択肢もありました。「忙しいし」「秘書の仕事じゃないし」「大変だし」、断る理由はいくらでもつけられました。新しいことに挑戦するのは怖さもあります。未知の世界ですから、不安も次々浮かんできます。それでも断らずに引き受け、不安や戸惑いを抱えながらもこの5つのスキルを持って行動してきたことが、結果的に今に繋がっています。

クルンボルツ教授はこうも言っています。

「偶然の出来事をただ待つのではなく、それを意図的に生み出すように積極的に行動したり、自分の周りに起きていることに心を研ぎ澄ませることで自らのキャリアを創造する機会を増やすことができる。」

今日あなたが出会った人、今起きている出来事が、あなたの将来を変えるかもしれません。それがただの出来事で終わるのか、望ましい機会につなげるかは、あなたの行動ひとつで変わってくるのです。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ 秘書 マネージャー
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修、秘書研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇、ビジネスマナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
■著書『ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
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