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確実性を高める、記憶の「見える化」

私の趣味は山歩きです。山に行くときは、たくさんの道具を持つ必要があります。

以前、山でお箸を忘れてしまったことがあります。山頂でお湯を沸かし、インスタントラーメンを作って食べることを楽しみにここまで歩いてきた私は、グツグツと煮えたラーメンを前に、お箸を忘れたことに気づき、しばし茫然としました。気を取り直し、果たしてどうやって食べようか?木の枝を切って、お箸を作れるか、ボールペンを使おうか。あれこれ悩み、ザックの中で代替品を探した結果、山用の小さな鍋の取っ手を外し、そこに引っ掛けるようにして、何とかラーメンを食べたことがありました。

山では、うっかりお箸ひとつ忘れただけで、ご飯が食べられません。雨具を忘れて雨に濡れれば、命にかかわることさえあります。

この苦い経験から、帰ってすぐに山歩き用の持ち物リストを作りました。以来、山行の準備をするときは、このリストを見ながら、荷物を用意しています。
忘れ物をしないためにと作ったチェックリストですが、使ってみると他にも便利なことがたくさんあることが分かりました。

なんといっても荷物の準備がとても楽です。何が必要だろうとアレコレ考える必要がありません。リストを見ながら次々にアイテムを集めていき、最後にリストでチェックしながらザックに入れるだけですから、素早く確実に準備ができます。

そして実際にその持ち物を持って山を歩くと、「次回はあれも持っていこう」とか、「これはもう不要だな」と装備の変更に気がつくこともあります。そのまま数か月が過ぎると、次に山に行く頃には、すっかり忘れてしまうのですが、チェックリストを作ってあれば、すぐにチェックリストを更新し、反省を次回に活かすことができます。

またチェックリストを作ることは、作業を「見える化」することです。同行者に必要な装備としてリストを共有したり、家族に準備を頼むこともできます。
こうして山歩き用の持ち物リストに味をしめた私は、「旅行用持ち物」「出張用持ち物」のチェックリストも作り、これも大いに役立っています。

このチェックリスト、航空の世界から誕生したものだと聞きました。
その昔、航空機の操縦は、何と記憶に頼って行われていたのだとか。その後、技術の進歩により操縦手順も複雑になり、記憶に頼った従来の操縦方法ではミスを防げないとの認識から、チェックリストが生まれたのだそうです。

記憶に頼って飛行機が操縦されていた時代があったなんて、驚きでした。記憶に頼った仕事は、不確実で限界があることを私たちはよく知っていますが、自分の仕事の場面では、意外に記憶や能力に頼った業務を行なっているものです。

時系列でやるべきことや、必要なモノをリスト化し、リストに従って作業をする。また、一連の作業を終えてから、チェックリストを使って、正しく行ったかを確認する。ミスやヌケモレなく、確実に仕事を行なうための基本です。

プライベートからビジネスまで、チェックリストは様々な場面で効果を発揮します。チェックリスト状になったポストイットも販売されていますし、チェックリストを作成するスマートフォン用のアプリもあります。チェックリストが便利なことは知りながらも、作成していない方も多いようです。記憶に頼って行なっていることを、チェックリストにしてみてはいかがでしょうか。

【井出 元子(いで もとこ) 】
株式会社小宮コンサルタンツ 秘書 マネージャー
岩手大学卒業。株式会社リクルート入社後、出版・編集現場のIT化に携わった経験をもとにトレーナーとして転職、Apple認定トレーナー・日本印刷技術協会認定DTPエキスパートとして出版・印刷・音楽業界等でのIT指導や技術セミナーの講師を行なう。移動体通信業界では、販売員の育成や接客コンテントの審査員等を行なう一方、社内インストラクターの育成に当たる。
2008年小宮コンサルタンツ入社、小宮の秘書を務める一方、新人研修やビジネスマナー研修の講師を務める。財団法人、金融機関、医療法人、サービス関連企業にて、新入社員研修、ビジネスマナー研修、秘書研修を実施。秘書技能検定1級。

■ 担当分野 接遇、ビジネスマナー、電話応対、秘書、新人・若手研修
■著書『ビジネスパーソンのための「秘書力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
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