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設備投資のポイント(3)

前回に続き、企業の命運を左右する設備投資の考え方について説明していきたいと思います。設備投資の意思決定の3つのポイントである『戦略性』の観点、『安全性』の観点、『収益性』の観点のうち、今回は『安全性』の観点について深堀していきます。

『安全性』の観点とは、その投資に自社の財務内容が耐えられるかどうかということです。どれだけリスクが取れるかは会社によって異なります。例えば純資産が100億円あり自己資本比率が80%の会社と、純資産1000万円しかなく自己資本比率5%の会社では、投資が失敗した際の倒産リスクが全く異なります。つまり財務内容が健全な会社は不健全な会社と比べて、許容可能な投資額が大きいということです。

具体的にどのような方法で判断するのかというと、設備投資後の貸借対照表を作成し、その予測貸借対照表を元に財務諸表分析を行います。短期安全性であれば手元流動性や流動比率、中長期安全性であれば自己資本比率が自社の基準をクリアできるかで判断します。

ここで重要なポイントがあります。それは上記にある自社の基準を予め決めておくことです。前回のコラムでも書きましたが経営者は事業欲が強い方が多く、儲かりそうだと思ったらイケイケドンドンで投資してしまうことがあります。お店で商品を見ると欲しくなるのと同じで投資案件が出てくると投資したくなってしまいます。そこで私は経営者に普段の冷静な状態で自社の財務の安全性基準を決めてくださいとアドバイスしています。その基準を割り込むような案件は投資しない、もしくは計画を変更する。どうしても投資したい場合は役員会で全員の賛成を取る、外部の信頼できるアドバイザーに相談するなど歯止めを掛ける仕組みを作ってくださいとお伝えしています。このような歯止めがないと自社にとってリスクが大きすぎる投資を実行してしまい、経営危機に陥ることにもなりかねません。

JR東海がリニアモーターカー開通に向けて工事を進めています。計画では2027年に東京・名古屋間を先行開業し、数年間かけて債務を減らした後に延伸工事に着手し、2045年に大阪までの全線開通の予定となっています(現在、財政投融資を活用した計画前倒しも議論されています。)。本来であれば中途半端なことをせず一気に工事を進めたいところでしょうがJR東海の財務内容をもってしても一度に進めるには過大な投資だという判断だったようです。このように設備投資は自社の財務状況に見合った範囲に収めるべきです。

 

【平野 薫(ひらの かおる) 】
株式会社小宮コンサルタンツ コンサルティング事業部
宇都宮大学卒業。キユーピー株式会社、株式会社帝国データバンクを経て現職。帝国データバンクでは年間約400社の調査を実施。優秀調査営業社員に選ばれ社長表彰を受ける。現在は上場企業や公的機関などの幹部・管理職を対象とした教育研修、および企業戦略の立案など各種コンサルティングに携っている。
■担当分野 経営戦略、財務会計、管理会計、マクロ経済、与信管理

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